第1回『浅沼 諒空さん』 ~後半~【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】
浅沼諒空さんのインタビュー後半です!
前半がまだの方はこちらから先にどうぞ
http://voidratohito.hatenablog.jp/entry/1
後半の内容はコチラ。
『同じフィールドにいる人への関心』
幸橋:
ばなわにさんや浅沼さんは顔が広くて、知り合いがたくさんいるイメージですが、こういうフットワークの軽さに起因しているんですかね。
浅沼:
どうなんでしょう。ただ、同じフィールドにいる人、ボイスドラマの活動をしている人へのアンテナは張っていますね。自分が出演した作品も聴かない人がいるそうですが、共演者の人となりを知るには作品を聴くことが一番だと思います。
幸橋:
正直、私はそれはどちらでも良いのではないかと考えているんですよね。演じる事と聴く事って違う楽しみだと思うので、演じるのは楽しいけど、聴くのは面白くないという人はいるのではないでしょうか?
浅沼:
インプットするコンテンツとして、他の小説や映画なんかは見た方が良いですが、自分が選んでいる場所でさえ、そこにいる他人に興味はないのはどうかと思います。自分の演技は聴いて欲しい、だけど、他人には関心がないというスタンスでやっていけるほどの求心力がある人はこの界隈ではほとんどいないと思っています。
『ボイスコだけのリーディングライブ「una:chenter vol.12」』
「新仲野ワニズホール」より
幸橋:
ばなわにさんと言えば、今年、出演者はボイスコのみ、脚本もボイドラで活躍しているAKITOLET*1さんという異色のリーディングライブを実施した事が印象に残っています。こちらはいつから?
浅沼:
先ほども話に出たように、una:chenter は2011年3月に公演を予定していたのが、震災で延期になり、その公演自体は同じ年の5月にやりました。
幸橋:
しばらく実施していなかった期間があると伺いましたが?
浅沼:
2012年で1回やめたんです。借りていた小屋で2か月に1回の頻度で公演するという契約をしていたのですが、無理だ―! と思ったんです。
幸橋:
確かに2か月に1回はえぐいですね
浅沼:
あと、2013年春にM3に出るようになって、こちらに集中したいと思って。一時期、M3に出ないとボイドラサークルじゃない! という風潮があったじゃないですか。
幸橋:
そうですか? でも、そう言えば、その頃からボイドラサークルが激増したような気もしますね。話が少し逸れるかもしれないのですが、即売会とリーディングライブは同じ性質があると思っていて。
浅沼:
ほうほう。
幸橋:
ボイドラってネットがメインの活動じゃないですか。もちろん遠方の人と繋がれるといったネットならではの良さはあるんですが、でも、ネットはやっぱり関係性が希薄なので、「互いの繋がりを強める」、「それによって長く続ける」、そのためにはリアルのイベントという存在も、ジャンルとしての成熟には必要不可欠だなと思うんです。
浅沼:
確かにM3で実際に会うと印象に残りますね。キャラのイメージと違うなーとか。コロポックルじゃなくて、意外に背が高いなとか。
幸橋:
それ、特定の個人のことですよね(笑)でも、そんな感じです。実際に会うとただネットでやりとりするよりは特別感が出ますよね。リーディングライブも観に行くとそのサークルさんはやっぱり他のネットでしか知らないサークルさんより浮き上がって見えるというか。
浅沼:
やっている方としては、リアルでの良さはアンケートを置いておけば、その場で直球で貶して貰えることですね。
幸橋:
貶されるのが良いんですか?
浅沼:
ネットだと反応と取れない曖昧なものもあるんです。ニコ動のコメントやいいね数や再生回数。身内同士で再生数を上げているのを見るとなんかなと思うんです。
舞台も身内が観に来る面がありますが、意見は直球です。
幸橋:
私も演劇のアンケートは少し過激というか、批判的なことを書いてしまいますね(苦笑)匿名性が高く、見られる範囲も限られているので。でも、私はメンタルが最弱で、批判的な意見が来たら、すぐシャッター閉じるタイプなんですよね。良くないと思いつつ、だから、貶されるのが良いというのはちょっとわからないかも。
浅沼:
役者はタフなので、誰もいないよりも敵がいる方が良いんですよ。放っておかれると死んじゃうみたいな感じで。
幸橋:
うさぎですか!!
浅沼:
そうそう(笑)
幸橋:
話は戻り、何でボイスコさんを使おうと思ったんですか?
浅沼:
ボイスコに出て貰ったのは去年からです。ボイスコの中にもステージ経験をしている人が少なくなかったので。Vol.12に関しては、去年12月を予定していた公演がなくなってしまったのですが、その時に最初に声をかけたのがボイスコだったので、ボイスコで固めるのも有りかなと思ったんです。また、出演者の中の紗倉妃芽*2が少女蘇生さん*3の舞台に出ているのを観て、出来が良かった。事務所所属の役者に遅れをとっていなかったので、いけると思いました。
幸橋:
そういうお話を聞くと、改めてどこからどこまでをボイスコと区切るのかとは考えてしまいますね。
浅沼:
ボイスコと声優が(格差としてのニュアンスで)違うという投稿を以前に見かけて、不愉快に感じました。自分もボイスコ側を完全擁護する訳では無いですが。
直接的にそれが理由ではありませんが、una:chenter vol.12はその投稿に対するボイスコ側の回答にもなると思いました。ボイスコなのかネット声優なのかという呼称問題があります。その議論に意味があるのか。ボイスコと声優で住み分けがあるのか。ボイスコは役者として認識が出来るのか。そういう命題を提示したい、解答を出したいと思ったんです。
幸橋:
結論、どうったのでしょうか
浅沼:
自称声優もボイスコも舞台役者も変わりません。全体としてそれぞれのポテンシャルをどう引き上げていくかの問題だと思います。舞台だって演技をし始めた新人とベテランがいて、稽古をしてどうポテンシャルを引き上げて同じスタートラインに立たせるかという事を数えきれないほとやっています。それをボイスコの企画だけごちゃごちゃ言われてもね、ですよね。
一方では、個々人の意識の問題で、住み分けをポジティブに考えられるか、頂いた対価に見合おうとするかだと思うんです。
幸橋:
自分の話をすれば、ネットでの同人活動だからと卑下してしまいがちなんです。だから、舞台経験されている方とか、事務所所属と言う方が、この界隈で活動されているのを見るとどう思っているんだろうなと。
浅沼:
単純に1つの表現形態として楽しんでいるだけだと思いますよ。あと、役者は役に立つのが嬉しいので。例えば、うちにもよく出演していたこば(小林将大*4
)はネット活動を経験して、それを仕事にし始めましたし、ぐっさん(山口和将*5
)は元は舞台経験者だったのが、ボイスドラマにも出演するようになったし、井折たくみ*6
の成功例もあります。
幸橋:
なるほど、そんなものなんですね。私からするとリアルの舞台はなんだか超えてはいけない壁の向こう側にあると感じてしまいます (苦笑)
浅沼:
舞台経験のある人間がそういうハードルを下げる役割を担うべきなのかもしれませんね。色んな人に踏み込んで欲しい、経験して欲しいと思います。目の前に人がいるというのはまた違った感覚なので。ボイスコ側は舞台役者や事務所所属声優にボイドラ界隈を荒らされたくないかもしれませんが(笑)
幸橋:
そんなことはないと思いますけどね(笑)ちなみに、今後のご予定は?
浅沼:
次は今年の12月の予定です。2012年にもお世話になった東高円寺の小屋と業務提携をしまして、2018年に定期公演を行う予定です。その1回目が今年の12月。
幸橋:
へえー! 定期公演復活ですか!
浅沼:
数を少なくして! ボイスコもそうですし、舞台役者も声優の卵も関連作品の収録に引きこんで、クロスオーバーみたいな事が出来ればいいねと話しています。
『同人ならではの難しさ』
幸橋:
ちょっと関係ない事挟み込んで良いですか?
浅沼:
どうぞ。
幸橋:
さっきもボイスコと声優は違うみたいな話題が出ましたが、同人はある意味商業より複雑だと思うんです。うまくなりたい人、しんどい思いはしたくなくて、ただ楽しみたいだけという人、色んな目的の人がいて、商業だったら、ある程度上手くなりたいという共通目的があると思うんです。
浅沼:
同人で楽しみたいという人も上手くなりたいとは誰でも思うんじゃないですか?
技術と技量を混同していると思う事はありますが。
幸橋:
技術と技量?
浅沼:
表現が難しいですが、 発声滑舌を学ぶ中で、声質も音質も改善できます。これが技術。でも、役柄に寄り添って自分に役を落とし込むのはテクニックだけではありません。確かに理論という基がないと出来ないんですが、技量が役者が求められていることだと思います。
幸橋:
そんな浅沼さんがこの人凄いなと思う人はいますか?
浅沼:
技量で?
幸橋:
そこは限定せずです! ちょっと気になったので。
浅沼:
浅見ゆいさん。*7
幸橋:
へえー、意外! 女性の名前が出るとは。何でですか?
浅沼:
たくさん依頼があるから。
幸橋:
(実際の記事ではかなり削っていますが)今回、インタビューする中で、結構な頻度で依頼欲しいっておっしゃってますね。
浅沼:
欲しい(超真顔)もう少し真面目に言うと、(アルコールぐびぐび)
幸橋:
最初から真面目に答えて下さい!
浅沼:
(真面目だったのに……)すぐ彼女とわかる声質で、あれだけ演技の幅が広いのは凄いなと思います。あとは結崎有理さん。*8
自分が不得手だと当初言っていたものにもチャレンジして確実にモノにしていくので。
他にもいますが、皆さん総じて、今やっていることと自分に自信があり、好きな人だと思います。
幸橋:
いつかインタビューする時に参考にしますね!
『ボイドラと人を言い出した理由』
幸橋:
最初にちらっと言ったように、浅沼さんは、このボイドラ活動者へのインタビュー企画の発案者な訳ですが、これは前々から思っていたんですか。
浅沼:
あったら面白いなと思っていました。宣伝目的の紹介は無くはないですが、もっとジャーナリズムというか、ニュートラルに踏み込んで欲しかった。
で、そこで白羽の矢が立ったのが! 天下の――
幸橋:
そういう持ち上げ方はいいんで! まあ、そこで私が声をかけられた訳ですけど、ご自分でしようとは思わなかったんですか?
浅沼:
面倒くさくて。
幸橋:
ちょっ!? 真面目な理由はないかもと予想してましたが、それは雑過ぎますよ! 泣きますよ!
浅沼:
ラジオでやってはいたんですが、面倒くさくて、拾いきれないと思ったんですよねー
あと、音と文章は質が異なる。音は聞き続けるのはつらいですし、エントリーとして残らないんです。
幸橋:
私もそこは思いました。音だと検索しても出てこないんですよね。
浅沼:
文章として入ることで、知らない人にとってのボイドラへの入り口になるかもしれないとは期待しています。
幸橋:
他に「ボイドラと人」に期待する事はありますか?
浅沼:
知らない人の情報が欲しいですね。自分とは真逆な位置にいる人が何を思っているのか出て来て欲しいと思います。
そして、ボイスコたちが、「ボイドラと人」でインタビューを受けることを目標にするような存在になって欲しいですね!!
幸橋:
………頑張ります
浅沼:
あれ、元気ない。
幸橋:
最後に今後の抱負は?
浅沼:
音声が溜まっている企画があるので、完成させたいです(土下座)
幸橋:
重力のみ(略)
浅沼:
そして、健康に気をつけたい!!(切実)
幸橋:
スルーされた!? でも、それは同意! 健康第一です!
インタビューは以上です。ありがとうございましたー
浅沼:
ありがとうございました。
(終わり)
浅沼さん、ありがとうございました!!
「ボイドラと人」第1回はどうでしたか?
なかなかインタビューって難しいなあと感じるコミュ障、口下手の私(苦笑)
でも、これを口実につっこんだ内容が聞けて楽しかったです。
それでは、また次回!
ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が700件を突破(2017年6月時点)
*1:ダークファンタジーの印象が強いボイスドラマサークルさん。音楽作品も配布している
http://akitolet.com/index.html
*2:品のある可愛らしい女の子が合う声(だと幸橋は思っている)女性演者さん
*3:文学的な作品の朗読公演を行う団体
https://twitter.com/syojo_live
*4:「小林」名義で同人活動していた男性演者さん。今では主に商業作品で活躍中
https://twitter.com/kobayasirotae
*5:ぐっさんの愛称で親しまれている男性演者さん。作品のどこかには必ずいる気がするけれど、いったいいつそんなに収録する時間があるのか謎な方
https://twitter.com/darumamoru0815
*6:低くて厚みのある声と演技が素敵な演者さん。明るいおじさん役が多いですが陰がるか苦しんでいる感じの演技が個人的に好き(by幸橋)
https://twitter.com/TakumiIori
*7:所謂、お姉さん声で耳かきボイスで人気の女性演者さん。優しいだけの声だと思ったら痛い目を見る←
*8:多種多様な女性が演じられますが、凛とした感じの女性が幸橋は好きな(誰も聞いてない)女性演者さん