ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」第11回は鳥籠街のシリーズでお馴染みで、インタビュアーが注目しているサークルさんの1つでもある「MärchenMarch」のさうら魎さんです!
「想いの力があれば死してもまた会える」というテーマまで掲げて死者や死後の世界を描くその理由、そして、インタビュアーが気になる「変化」と「キャスティング」についてもお話をお聞きしました。
【本日のゲスト】
さうら魎さん
企画者、演者
2009年より「夢樹のオトバコ」にて本格的にボイスドラマ制作活動を開始。その後、個人の一次創作サークル「MärchenMarch」でも、ボイスドラマ企画を始め、2017年秋に6作目「ただしいバラの愛しかた」を頒布。「想いの力があれば死してもまた会える」をメインテーマに作品を制作している。また、別名義でボイスコとしても活躍中。
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幸橋:
最近注目しているサークルさんは? と訊かれたら個人的に名前を挙げたいという超個人的理由でお呼びしました。今回のゲストは「MärchenMarch」の企画者さうら魎さんです! よろしくお願いします!
さうら魎さん(以下、さうら):
よろしくお願いします! 緊張しますね(苦笑)
幸橋:
大丈夫です! 私の方が緊張しているので(おい、インタビュアー)
『実は、前からいました~ボイスドラマを知ったきっかけ~』
幸橋:
さうら魎さんはボイスドラマ企画者さんというイメージとイラストを描くイメージがあり、かつ、別名義で演じる活動もしているのですが、どこからボイスドラマは知ったんですか?
さうら:
両親が最新家電が好きな人で、家にパソコンが早い時期からあったんです。それを使ってネットで検索していたら、自分の創作キャラのイメージボイスを募集している企画を見つけて、そこから音声作品を知りました。
幸橋:
その企画を見て、ご自身でも企画を始めたんですか? それとも、その時から声の活動を?
さうら:
その企画を見つける前から音声を録音して遊んでいたんです。だから、実はその企画にも応募して、有難い事に採用して頂きました。企画に参加すると、企画がどんなものか勝手がわかります。私もオリジナルのイラストを描いていたので、そのキャラのイメージボイスの募集もしましたね。
幸橋:
それはいつ頃の話ですか?
さうら:
15年前くらいでしょうか。
幸橋:
予想外に活動歴が長いんですね。活動は2009年からと伺っていましたが。
さうら:
それはもう1つのサークル夢樹のオトバコ
*1を始めたくらいですね。個人での企画もその前からちょくちょくしていました。
幸橋:
そうなんですよね。MärchenMarchでも夢樹のオトバコでも活動されていますよね。この2つのサークル活動を始めたきっかけは?
さうら:
私の個人企画の編集のお手伝いを夢樹のオトバコメンバーのえくさん
*2にお願いしたことがあるんです。えくさんも昔は個人でボイスドラマを作っていたのですが、サークルメンバーを募っているということを知って、一緒にやりませんか? と声をかけました。
幸橋:
MärchenMarchと夢樹のオトバコ、どう使い分けているんですか?
さうら:
作風が違いますね。夢樹のオトバコはもっとほのぼのしているので、そこで分けています。 えくさんは
イラストレーターとして活動もされて、なかなか夢樹のオトバコでボイスドラマ作品を作れないので、個人企画のMärchenMarchで作っているという理由もあります。
幸橋:
MärchenMarchでボイスドラマを作り始めた理由は何だったんでしょう? ボイスドラマサークルではないんですよね。
さうら:
個人の一次創作サークルです。なので、ボイスドラマだけではなく、イラストや小説も書いています。今、言ったように夢樹のオトバコが自由に出来なかったのと、元々、二次創作をメインに活動していたのですが、熱をあげていた作品が終了してしまって、創作意欲をどう消化しようかと考えて、オリジナルで創作をしようと思い、MärchenMarchを始めました。
幸橋:
MärchenMarchとしての最初のボイスドラマ作品は、「冬幻郷の少年」
*3ですか。
さうら:
いえ、
「あるかみさまのものがたり。」*4という小説がメインの作品でボイスドラマを作ったのが最初です。
幸橋:
あ、それ持ってます! 私は1枚しか持っていないのですが、あれは結局いくつ作ったんですか。
さうら:
ボイスドラマメインで作ったのはその1枚だけです。あとは本のおまけで2枚作りました。
幸橋:
では、続きは小説で、ということですね。
『メインテーマ「想いの力があれば死してもまた会える」が生まれた理由』
幸橋:
MärchenMarchさんはメインテーマが「想いの力があれば死してもまた会える」とあるように死者や死後の世界をよく扱いますが、なぜ、こんな作風に?
さうら:
私個人がホラーじゃない幽霊ものが好きなんです。私は死ぬことが恐いことだと思っているんです。死は人間に必ず訪れるのに、よくわからない。だから、創作を通して客観的に死を見つめて、想像して、死とは恐い事じゃないよと自分に言い聞かせているんだと思います。
幸橋:
なるほど。
さうら:
また、幽霊とは死と同様によくわからない存在であるにも関わらず、創作のテーマとしてよく扱われ、共通の設定があります。例えば、普通の人には見えないとか、足が無いとか。特殊な設定なのに、それを説明する必要がなく共通のイメージがあるというのは、創作する上での強みだと思います。その幽霊の常識を壊す設定を入れることも出来ます。
幸橋:
例えば?
さうら:
「星空の下のサナトロジー」*5のアドニスとアリシアは幽霊ですが、成長するという設定があります。
幸橋:
そういえば、確かにそうですね。何も不思議に思わず聴いてました(苦笑)
MärchenMarchさんは、死者にも優しいというか、死者にも丁寧なお話を書きますよね。多くの作品では死者への扱いが雑じゃないですか。お前らは成仏したら幸せだろ! と言うがごとく、強制成仏させてハッピーエンドみたいな。
さうら:
成仏したら終わりはつまらないと思うんです。私も幽霊になったら幽霊生活をエンジョイしたいですし。透明なので、タダで映画観に行ったり。
幸橋:
幽霊になって映画を観に行くという発想が面白いですね(笑)そういえば、この「想いの力があれば死してもまた会える」というテーマはサークルを作った時からあるんですか?
さうら:
いえ、あるかみさまのものがたり。を聞いてくれた方に、「想いの力があれば死してもまた会える」という感想を貰って、これをテーマにしよう! と(笑)
幸橋:
かっこいい感想ですね。そんなテーマで作品を作っているMärchenMarchさんと言えば、鳥籠街にある館の主人たちのお話ですが、これは最初からシリーズというか、関連作品を展開する予定だったんですか。
さうら:
鳥籠街の少年荘*6を作った時はこれで完結にしようと思っていて、続きを作る事は考えていませんでした。でも、
鳥籠街でもっと何か出来るんじゃないかなとなんとなく思って、今に至ったという感じですね。
幸橋:
このシリーズには決まりはあるんですか。鳥籠街でのお話という共通の設定はあると思いますが。
さうら:
主が少年であることが重要です。
幸橋:
なるほど(笑)確かに重要ですね。
さうら:
私がこういう少年が好きですという自己紹介みたいなものですよね(笑)
幸橋:
鳥籠街の屋敷の主人は何人いるんですか。
さうら:
作中では4人いるということになっています。
幸橋:
その主人たちの中でもこのキャラは思い入れがあるのは?
さうら:
難しいですね。みんな好きですが、
少年荘のよくは思い入れが強いですね。3作目になりますが、毎回橘こむぎさん
*7が快く演じて下さって感謝です。
『作品の変化~レールを敷かずに野に放つ~』
幸橋:
ゲストとしてお呼びした一番の理由でもあるのですが、個人的にMärchenMarchさんは最近で特に作品に変化のあったサークルさんだと思っているんです。去年の秋の作品「殯の大地」
*8と「名も無き蝶が嵐を起こすまで」
*9で変わったなと。
さうら:
少年荘を作った時に、伝えたいテーマをうまく見せようと取り繕っていたなと思います。そのせいでやりたいことがぶれていました。だから、うまく作ろうとするのはやめよう、好きなことを全面に出そうと思ったんです。変化があるとすれば、心境の変化だったと思います。
幸橋:
テーマというのは先ほどのMärchenMarchさんのテーマですか?
さうら:
伝えたいテーマというのは皆さん考えていると思うんです。聴いた後に聴いた人がこういう気持ちになって欲しいなとか。でも、そう考えるとレールが敷かれてしまって、自分が書きたいものが書けないんです。私はテーマを持たせない方が上手くいくと思いました。
幸橋:
確かに。MärchenMarchさんのテーマは無理に出そうと思わなくても、さうら魎さんが好きなものを作ればそのテーマ性が出そうですしね。それ以外は余計な囲いになるのかもしれませんね。
さうら:
そこからは野に解き放った野良犬がごとく、自由に自分がやりたいようにやっています。
幸橋:
野に解き放った(笑)ちなみにそう思って書き始めた後の作品はどんな「好き」を全面に出したんですか。
さうら:
名も無き蝶が嵐を起こすまでは、お兄ショタで鬼ショタですね(笑)
幸橋:
鬼ショタ!(笑)あ、でも、わかります。少年荘のよくが優しい少年、優しいお話だったのに、いきなり名も無き蝶が嵐を起こすまでで容赦なくなって、何が起きたんだろうとギョッとしました。他には考えていたことはあるんですか。
さうら:
あとは、鳥籠街という世界感はできていたので、どういう未練があって、解消のために何をしたいのかという部分を考えながら、野に放ちました。
「ただしいバラの愛しかた」*10は
バッドエンドが書きたいと思って書きました。
幸橋:
あれ?名も無き蝶が嵐を起こすまではバッドエンドではない?(苦笑)
さうら:
あれはキャラがある意味あれで納得しているので、少なくともバッドエンドではないと思っているんです。でも、ただしいバラの愛しかたの場合は、登場人物が全員が性格がひん曲がって、全員納得している訳ではありません。
幸橋:
名も無き蝶とただしいバラの結末が衝撃なので、次の主の話はどうなるのかと冷や冷やしています。この2つの作品も面白かったんですけどね。
さうら:
次はもう少し優しいお話になる予定ですよ(笑)
幸橋:
鳥籠街のお話以外の物語は何を書きたいと思って書いたんですか?
さうら:
他の作品はそういうテーマというか、メインとなる要素が無いんです。私は、こういうのが面白いんじゃないかと突然ア
イデアが湧いて来るタイプなのですが、
殯の大地は少年荘の後に、主となるキャラ1人は生きているけど、周りは死んでいるという話はどうだろうとアイデアが浮かんで書きました。
幸橋:
殯の大地も、何だかフレーズが耳に残るんですよね。「僕が生まれる少し前、この星に限界がやってきた」とか。一言が強いなと思う作品でしたね。
さうら:
言葉選びは以前から頑張っているのですが、加えて、言わせようとしているというよりも、自然にキャラが生き始めたのかもしれませんね。
幸橋:
もう1つ、星空の下のサナトロジーも最初はどういうア
イデアが浮かんだんですか。
さうら:
サナトロジーは
最初は探偵ものがやりたかったんです。主人公が
安楽椅子探偵という設定で、操作をしているのは双子の幽霊という、某小学生探偵みたいですよね(笑)でも、探偵ものは難しかったので、
幽霊が問題を解決するという部分だけを残して、それ以外は全部変えました。
幸橋:
サナトロジーは最初の星空のシーンが印象的でした。
さうら:
よく言われている死んだ人はお星様になるというのが印象的で、死者を扱っているからには出したいなと思いました。
後半に続きます!