こちらは第11回さうら魎さんのインタビューの後半です。
前半がまだの方はこちらから先にどうぞ!
http://voidratohito.hatenablog.jp/entry/11
『キャスティングで重視するのは喜怒哀楽の喜と楽』
幸橋:
MarchenMarchさんでもう1つ凄いなと思っているのが、キャスティングが秀逸なんですよね。演者さんのイメージとは真逆の突飛なキャスティングという訳では無いのですが、より演者さんの演技の広がりというか、気づかなかった一面を見せてくれることが多いと思っています。キャストさんは依頼よりも募集が多いんでしたっけ。
さうら:
そうですね。募集が多いです。名も無き蝶とサナトロジーが依頼でした。
幸橋:
キャストを決める時に意識していることはあるんですか?
さうら:
募集の時は選考セリフに喜怒哀楽が入るようにしています。その中でも「喜」と「楽」は重視しています。怒りや悲しみはお芝居で出しやすいのかなと思っているのですが、喜びや楽はキャラを保って演じるのは難しいと思うんです。笑いは特に不自然になりやすい気がするので、キャラのまま自然な笑いの演技が出来る人を選んだり。
幸橋:
例えば、その観点で選んだ方はどなただったんですか?
さうら:
少年荘の選考では、松本雪花という女の子の役が1人だけいて、応募が集中してが選考が難航したのですが、笑ってもキャラを保っているというのが少なくて、その中でも、
羽森つぐみさん*1は笑っても雪花を保っていたので、選びました。
幸橋:
私、昔から喜怒哀楽の喜と楽がよくわからないんですよね(苦笑)楽が良い人っているんですか。
さうら:
「楽」は榊さん*2がピカイチでした。力を抜いた演技は難しいと思うのですが、キャラが保たれていて、ふとした瞬間に出るキャラの雰囲気、感じをすばらしく演じてくださいました。
幸橋:
私も企画はやったことがあって、見せ場とか、重要なセリフを選考台詞にするのですが、そういうことはないんですね。
さうら:
重要なセリフの言い回しは
ディレクションでどうにかなると思うんです。なので、
私が口出しできないところで自然に演じられる方を選んでいます。ここは悲しいんじゃなくて怒っているんだよといった
感情の動きは指摘できますが、キャラクターとして怒れていないよというのは説明出来ないじゃないですか。
幸橋:
なるほど。依頼の場合は、どうしているんですか。
さうら:
出演作を聞いて依頼することが多いですね。
名も無き蝶はシナリオを書いている途中でキャラが声付きで話し始めました。その頃、ひかげ役の天合さん
*3が、神崎さん
*4とラジオ、アパートB×B
*5をやっていて、その中で、いろんなキャラを演じていたので、天合さんと神崎さんはどんなキャラをふってもやってくれると思いました。
ラジオで普段やらない演技やキャラを演じることは良かったと思いますよ。
幸橋:
サナトロジーの神崎さん演じるオリバーも良かったですよね。ただ明るいだけじゃなくて、まさに甥っ子を心配するおじさんで、神崎さんは三枚目もよく演じていらっしゃいますが、その中でも特に好きでした。
さうら:
お願いしたキャラが今までやったことのない役だったと言われることが多いのですが、神崎さんにもオリバーのような軽薄そうなおじさんはやったことがなかったと言われましたね。
幸橋:
あれ、そうなんですか? 意外です。そういうキャラを演じるイメージでした。
さうら:
私もそのイメージだったんですが、意外にやったことがなかったそうですよ。
幸橋:
他に意外だというキャラはどれだったんですか?
さうら:
名も無き蝶ではクロはみや。さん*6となつさん*7の役が逆じゃないかとは言われましたね。でも、やっぱり
みや。さんの少年ははつらつとした感じで、何考えているのかよくわからないクロはなつさんだなと思います。
幸橋:
あの害意無く、無邪気に
どん底に突き落とす感じが、やっぱり蔦なつさんの声ですよね(笑)
さうら:
それに、シナリオを書いている時にあさぎがみや。さんの声でしゃべったんですよ。みや。さんは少年のイメージがあったんですが、女性をやってみてほしいなと前から思っていました。あさぎは女性だけど男性というか、男性のひかげの魂が入っている時と女性のあさぎだった時の演じ分けが必要だったのですが、みや。さんは器用だから出来るだろうと思ってお願いしました。
幸橋:
他にキャスティングの際に意識していることはありますか。
さうら:
上手い人が多くて、選ぶのに迷ってしまうのですが、軸がぶれないように、道しるべというかベースになる最重要視するキャラクターを決めて、そのキャラとかけあって自然になる人を選んでいます。
幸橋:
一番新しいただしいバラの愛しかたでは誰だったんですか。
さうら:
主人公の旭と探しものをする灯路でした。
幸橋:
主人公の旭でもなく、館の主のソウビでもなく、灯路ですか?
さうら:
灯路は喜怒哀楽が激しく、この人がきっかけで事件が起きるので、重要視していました。少し脱線しますが、叫び台詞が多かったので、灯路は応募が少なかったですね。
幸橋:
でも、彼も面白いキャラでしたよね。見た目もよくて天才肌という役に美藤さん
*8というのはそこまで意外ではありませんでしたが、最初の淡々とした感じから徐々に地が出ていく過程が面白かったです。キャラがどっちかへ振れ切れるのとは違う美藤さんの演技の繊細さを見た気がします。
それで、彼とかけ合うにあたって、旭やソウビはどういう観点で選んだんですか。
さうら:
募集した時に、
大人びた旭も幼い旭も色々あったのですが、灯路と合わせてみて、旭らしい感じがあったのが、しぐれなおさん*9の旭だったんです。
幸橋:
確かに幼すぎても灯路と立ち向かえないですし、大人びると灯路と似てしまいますね。
さうら:
しぐれなおさんを選んだのは他にも理由があって、旭はモノローグが多くて感情も激しいので、聴きやすさと演技力を重視しました。しぐれなおさんはナレーションが聴きやすいですし、演技力は申し分ありませんでした。また、声に癖がある訳では無くて、凡人ではないけど、天才でもない旭というキャラに合っていたんです。
ソウビの春希さん*10は、
ソウビは他の主と被らないことが重要でしたね。最初は演じる人が男性か女性かで悩んでいたんですが、春希さんのソウビは、
ソウビの麗しさや冷たさがあって優雅で聴きやすく、スッと入ってきたので、選びました。
幸橋:
声質はあんまり気にしないんですね。
さうら:
声質重視ではありませんね。
キャラがかぶらないが重要です。あとは、もう感覚です(笑)
即決で決める場合はだいたい感覚です。
冬幻郷のサナを演じてくださった有澤空さん*11は求めていたもので、一発で決まりました。悩めば悩むほど論理立てて考えてしまいますから、そういう時は即決です。
幸橋:
一言にキャスティングと言っても、キャラに応じて複数の方法を使い分けているんですね。
『たくさん紹介してもらいました~好きなサークルさん、演者さん、作品~』
幸橋:
予想通りだと思うので、早速行きましょう! 好きなサークルさんは?
さうら:
たくさんあるのですが、
碧空プラネタリウムさん*12は、
言葉がキレイで、言葉選びが上手だなと思います。作品は多いですが、どれも心に残ります。雰囲気が固定していて、
お店で言うと専門店タイプだと思います。逆に
雑貨さんのように色んな雰囲気の作品が置いてあるという意味で好きなのは、
おにぎりワゴンさん*13と
iDearoomさん*14です。作品によって雰囲気が違っていて、自分の作品は雰囲気が固まっていて、特にギャグが苦手なので、凄いと思います。あとは、
SpiralSpiritさん*15の特に
「再生ティルナノーグ」*16が大好きで、ティルナノーグという言葉の意味を知らなかったので、調べてそういう意味だったのかと気づきがありました(調べてみてください)1か月に1回は聴いています。そして、
箱庭Sさん*17。
「Leonino Vambino」*18が好きです。
中だるみせず、ずっとパワーがあって、起伏がある。力のある作品です。男の子がいっぱい出て来るのも良いのですよね(笑)
幸橋:
最後の回答が想像出来てしまいました(笑)では、好きな演者さんは?
さうら:
企画でご一緒した方の中で何人か挙げると、男性は
冬沙悠さん*19と
榊孝祐さん。女性だと
音枝優日さん*20と
みや。さんとか。
幸橋:
それぞれ理由は何でしょう?
さうら:
冬沙悠さんは、
掛け合いが上手なんです。私のところの企画は
宅録で、音声を全部繋げて掛け合いの状態になった仮組みを役者さんに渡すんですが、
「この話は星と共にビンに詰めて」*21の時に、
私がOKを出したものを冬沙さんがご自分でリテイクを出してくださったんです。その録り直したもので組み直したら全然違って。リテイク前も満足していたのですが、倍以上良くなっていました。千野いあさん
*22が相手役だったんですが、相手役の良さも引き出しますし、役も立っていて、スタ録をしたらすごいんだろうなと思いますね。声も良いですし、感動しました。
榊孝祐さんは、先ほども言いましたが、抜きの芝居が好きで、ふとした時の演技したように聞こえないお芝居がうまいなと思います。あと、榊さんのインタビューの時も仰っていましたが、ガヤがお上手で、殯の大地でガヤをして貰ったのですが、雰囲気だけお伝えしてお願いしたら、想像した量の倍の量で戻って来ました(笑)演技がうまくて、アドリブも出来る方です。
幸橋:
2人目にして、愛でお腹いっぱいなところがありますが(笑)女性のお2人は?
さうら:
音枝優日さんは演技プランを立てるのがすごいんです。このキャラはこの時、どういう立ち位置かという細かい質問をくれて、その立場になれない時にどう打破するのかプランを立てるんです。
幸橋:
うん? 例えば、どういうことをされるんでしょう?
さうら:
サナトロジーで幼いレジーが飛行機事故にあった時のシーンがあるのですが、飛行機事故にあうなんて感覚でやるしかないじゃないか。でも、音枝さんは、体勢はどうなっていて、どこがどういう状態なのか確認して、私が足が挟まれて体が動かない状態ですと答えると、そういう状態にはなれないので、めちゃくちゃ背筋して収録に挑んだと。それを聞いて、そこまでするのかと思いました。演技も凄いですし、サナトロジーは音枝さんのレジーきっかけで始まるのですが、しっかり物語に引きこんでくださいました。演技の仕方も向き合い方も他にはない役者さんです。
幸橋:
サナトロジーの音枝さんは凄かったですよね。それもあのシーンが印象に残る要因の1つでした。
さうら:
音枝さんのあの演技は本当に聴いて欲しいです。
幸橋:
それでは、みや。さんは?
さうら:
みや。さんは名も無き蝶の時にも言ったように女性なのに男性という難しい役をふりましたが、声が同じなのに、違うキャラの雰囲気を出して凄いと思いました。少年声も好きですね。ただしいバラの時は少年を演じて貰いましたが、かわいかったですね。何でもできるタイプだと思います。女性も少年もその中でもまた細分化されていて色んな役が出来る方だと思います。
企画に出て下さった方は皆さん素晴らしくて、代表して何名か挙げましたが、本当は1人1人語りたいくらいです。
幸橋:
それだけきちんと聴いてもらえるというのは役者さんも嬉しいでしょうね。
さうら:
最後に参加して良かった、また出たいと言われるサークルになりたいと思っているので。
幸橋:
これだけ演者さんが集まるということはそういうサークルさんに既になっていると思いますよ。
では、既にいくつか名前が出て来ていますが、好きな作品は?
さうら:
再生ティルナノーグはさっきも言ったように大好きです。あとは、
stray sheepさん*23の
「さよならがいえずに」*24学園ものでわちゃわちゃしている感じが自分では書けないですね。でも、天合さんに描きたいテーマが同じだよねと言われたことがあって、突然終わりが来る、現実ってこうだよなというのが似ているんだと思います。ですが、
最後に光が見える作品が好きで、さよならがいえずにもそういう作品でした。おにぎりワゴンさんでは、
「LAST desire」*25はもちろん好きですし、
うどん擬人化企画*26が好きです。
こんな発想が出来るんだと(笑)今も持ち歩いて聞くくらい好きです。
最後、はあー……と引きこまれる要素がある作品も好きで、それで言うとiDearoomさんの
「カイチ」
*27が終わりの
やるせない感じが好きでしたし、空想科学研究所
*28の
「OBSERVATION」*29は
なんて作品を聴いてしまったんだろうとすぐに二周目を聴きました。
幸橋:
たくさんご紹介ありがとうございます!
『今後の予定・抱負』
幸橋:
それでは、最後に今後のご予定は?
さうら:
秋に鳥籠街の物語を完結させる予定です。あとは、あまりやったことのない明るめの作品も出す予定なので、来年の秋に新作を2作出す予定で動いています。
幸橋:
鳥籠街は次で終わりなんですか? 残念……
さうら:
続けようと思えば続けられますが、きりが良いところで一回締めた方が収まりが良いかなと思いまして。
幸橋:
そして、秋に出すということは、春はお休みでしょうか。
さうら:
今年、春と秋に作品を出しましたが、正直大変でした。半年に1回作品を作る人はすごいですね。私はシナリオを書いたらしばらく置いて読み直したいので、半年から1年かけて作品を作るのが性に合っているんだと思います。
音声作品はこれからも作っていきたいと思っているので、ぼちぼちやっていきます。
幸橋:
来年の秋を楽しみにしています!
インタビューは以上です。
さうら魎さん、ありがとうございました!
『後記』
最初に書いたように、作品に変化のあったサークルさんの代表例として「MärchenMarch」さんを紹介したいなと思い、企画者さうら魎さんをお呼びしました。実はお話を聞く前までは、私の勘違いで、特にご自身は何も変えたつもりがないと言われたらどうしよう! とドキドキしていましたが、回答を聞いてホッとしました(笑)キャスティングも何だか気になるなあと半信半疑で訊いてみたのですが、こだわりをお持ちで、やはり! と思いましたね。これからの変化も楽しみな「MärchenMarch」さん、そして、さうら魎さんでした。
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インタビュアー/幸橋
幸橋 (@kusanotsuki) | Twitter
ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が800件を突破(2017年9月時点)
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