ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」

「ボイスドラマ」をテーマに、インタビュー記事をメインコンテンツとして配信しています。今後、ボイスドラマに関わるイベントや新作の告知、作品紹介コラムも増やしていく予定。

第19回『月詠 深琴さん』 ~後半~【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】

 ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」の第19回「月詠 深琴」さんインタビューの後半です!
 

前半がまだの方はこちらから先にどうぞ。

http://voidratohito.hatenablog.jp/entry/19

 

 

後半の内容はこちら!

<目次>

『あてがき~ラピス交響曲の場合~』

 
幸橋:
噂によると団長さんはあてがきが多いとか? 
 
多いですねー
 
幸橋:
やっぱり! ちなみに、ラピス交響曲は誰があてがきだったんですか?
 
イソラ隊の5人はイソラとユアンは最初からああいうキャラクターでした。ああいう性格・容姿でした。でも、残りの3人は名前と役職だけ決まっていて、性別は決まっていなかったんです。オーディションをワークショップ形式でやった時に演じてくれた3人が良いキャラを持って来てくれましたが、オーディションでは女性がやったりもしていたんですよ。
 
幸橋:
女性が?
 
ノラも「~っす」と言っている女の子のバージョンがあって、可愛いなと(笑)
役者を誰にしようと思ってバランスを見てあの5人にしました。完全なあてがきではないですが、3人のサンプルボイスをイラストレーターさんに聴いてもらってあの容姿になりましたね。あとは、4章の人たちですね。
 
幸橋:
あの賑やかな書記官たちですね(笑)
 
本当は4章に関してはテイル、ノラ、ミルトがそれぞれの知識を駆使して魔装を作る予定だったので、最初のシナリオでは魔装を作るところはもっと短いはずでした。だけど、もっと個性を出してあげたいと思って、テイルはレーゼン隊、ミルトはフラシオン隊、ノラはカンナ隊とそれぞれ絡ませようと思って生まれたのが彼らで皆あてがきでした。あとはさっき言ったようにカイトもあてがきです。他のキャラは最初からいて、ある程度役者さんを決めた後に寄せて書きました。
 
幸橋:
こんなこと言ったら怒られるかもしれないんですが、レーゼン隊、フラシオン隊、カンナ隊ってあてがきどころか個々に名前が無いキャラでも成立しましたよね。音声だけの作品ならもっとすっきりさせようとは思わなかったんですか?
 
それには理由があって、まず、根本的にはモブという概念が嫌いなんです。人間皆生きているんだから、それぞれに人生あると思うんです。今回はフォーカスされなかったけれど、バックボーンがあるはずだというのが理由の1つです。
 
幸橋:
他は?
 
ボクがお芝居の基本的な技術として学んでいるのがマイズナー・テクニックというもので、この手法の根本的な考えは、演じることはやめろというものなんです。リアリティのある芝居が根本にあります。この手法の産みの親マイズナー曰く「キャラクターはすでにその人の中にある」だそうです。ボクは、その人の中にあるキャラを引き出すのが演出家、プロデューサーとしての自分の仕事だと思っています。それにせっかく本も書けるならその人が持っているキャラクターを形にしてあげたいとも思うんです。
 
幸橋:
その2つがあてがきをする理由ですか?
 
あとは、ボクはコミュ障なので、何かものを作るというフィルターを通してでないと話せないんです(苦笑)約束ノ歌編のキャストさんは飲みに行きましょうとか積極的に誘って下さる人が多いですが、必ずしも皆さんそうではないので。インタビュー記事じゃないですが、あてて書くので、あなたのことを教えて下さいと言って、その人と対話していた面があります。
 
幸橋:
そうして、その人の中に既にあるキャラを引き出すんですね。
 
その人が話しているのを聞いている内にこういう性格・キャラクターなのではないかと思うようになって、聞いてみるとそうですと言われることが多いですね。具体的に言うと、本当は同性愛者ですよね?と聞いたら、よくわかりますねと言われたり。それくらいつっこんでその人のことを見て、受け入れたいタイプなんです。深い仲になると心の声というか、本当はこうなんだという声が聞こえてくることがあって、自分のキャラはこうだという顕在的な部分とは違うところで、本当の俺はこうなんだよという声がたまに聞こえて来ることがあります。それを代弁したいとは思いますね。
 
幸橋:
具体的にどのキャラがそうだったんですか?
 
それを一番言ってくれたのは、ライアーさんかな。
 
幸橋:
ユアンの2番目の兄ですね。
 
ライアー役の原田さん*1はあてがきではないんですけど、ライアー役をお願いする際になんでお芝居をやっているのかって聞いたんですが、その時に辞める理由がないからやっていると言われたんです。別に深い理由はないけど、求められるし、楽しいし、それで生活もしているからと。
辞める理由がないと言われて、ライアーってそういう人なのかなって思ったんです。作中で死ぬ理由がないから生きているだけというセリフがあるのですが、それは本人が言っていることをキャラクターとして言わせてあげたいなと思って書きました。そういう生き方もあるんだよと言いたい。これが誰かの何かに刺されば良いなって。使命とかやりたいこととか夢とかではないけれど、それも生きる理由なんだよなって。
 
幸橋:
私、ライアーは結構ラピス交響曲の中でも好きなキャラの1人なんです。私だけでは無くて、一定数共感する人はいると思いますよ。
 
そんな諸々の理由からあてがきをしたり、キャラが増えていったり(笑)
ラピス交響曲交響曲(シンフォニー)の由来でもありますが、自分が企画するカンパニーはオーケストラをイメージしているんです。
 
幸橋:
オーケストラ?
 
自分がいろんな同人現場、商業の現場を見させてもらって、純粋にモノづくりをするならどういうカンパニーが良いのかなと思ったんです。
もちろん企業さんは連絡や手配はちゃんとしているし、制作体制もきちっとしているけれど、原作者の方に会えないとか、どういう意図でこの作品を作りたいのか話したいと思っても話せない。吹替の現場に入ってもおわりました、お疲れ様ですという感じだから、テクニカルなことは言うけど、内面の話はしない、音響監督のディレクション任せで、温度的には冷たい感じがするんです。
では、一方で、同人の方はというと、サークル感覚でわいわいするのは楽しいですが、企画倒れしちゃったり、サークルくらい仲が良いことで逆に派閥ができたり、人間関係をこじらせたりで、うーん……と思っていたんです。だから、ボクは間をとりたいなあと思って、ファミリー感というか、背中を預け合えるような対等なメンバーにしたい。
 
幸橋:
それがオーケストラ?
 
そうです。上下ではなくて、役割分担と考えるんです。キャストだから裏方だからということもなく、音楽家さんがいて、イラストレーターさんがいて、キャストさんがいて、ボクはシナリオという譜面を書いているだけで、演奏はそれぞれにお任せします。演奏を始める際に指揮をとるという感じです。シンフォニーを皆で奏でましょうと。だから、いろんなタイプのいろんな人がいてほしいなと思います。ハーモニーですよね。いろんな楽器があった方が重層なものが奏でられるんじゃないかなって思って、いつでもオーケストラ編成になります。カルテットくらいにすれば良いのにと思うんですが、小さくならないんですよね。
 
幸橋:
なるほど。それでオーケストラですか。イメージしやすいです。
 
キャラを絞った方が良いんでしょうけど、音声だけでどこまでできるかなというのもあります。
声質をかぶらないようにするので、濃いキャラクターになるし、作品に関しては1回だけ聴いてわかってもらおうとは思っていません。何回も聴きたくなるものを作ろうという意識でいます。1回ぱーっと聴いてよくわからなかったと戻ってきたりとか。
なんだか、たまーにこの章が聴きたくなるんですと言われる事があって、たまーに2章を聴くとすごく泣くんですよねとか、4章が無性に聴きたくなるんですとか、6章のおかえりのところが聴きたくなるとか。
帰って来れる作りにしているので、聴く回数を経るごとに深み出れば良いかなと思ってあえてキャラは増やしています。
 

『あてがき~約束ノ歌編の場合~ 』

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幸橋:
では、今年頒布された「約束ノ歌編」のキャラはどうなんでしょう?
 
約束ノ歌はメインキャラ以外ほぼあてがきです。キャストを募集した時は6人のメインキャラがいますとしか言っていなくて、あとは、参考文献があるので、 シリウスの女神が5人いるのは決まっていました。ちなみにシリウスの女神は、文献上名前が出ているのが4人しかいなくて、もう1人誰!? とだいぶレポートや文献をあさりましたね。それで、最終的にイシュタルにたどりつきました。
 
幸橋:
全キャラ中だいぶ限られたキャラしか最初は決まってなかったんですね。
 
ぶっちゃけキャラはあと何人どのポジションで出すというのは全く決めずに始めたので、アトランティス軍も最初は軍人A、B、C、Dとしか書かれていなくて、無線の音声しか入ってませんでした。当初はドーファンが戦う予定で、全く今のスタイルではなかったんです。
 
幸橋:
あれ? アンリミテッド・コープスの影も形もない(苦笑)
オーディションはどんな感じだったんですか? 実際にオーディション会場に来てもらってのオーディションだったんでしたっけ?
 
はい、ワークショップ形式でした。そんなオーディションですし、無名だし、そんなにオーディションには来ないと思っていたんですが、蓋を開けてみると、総応募数100名くらいいて。
 
幸橋:
それはすごいですね。
 
ボイスコさんもいるだろうから、ワークショップ形式は好まれないと思っていたし、サンプルを出すのが普通だと思うんですけど、自分が演者である分、サンプルボイスを信じてないんですよね。それ一番良いテイクでしょ、と。あと、やっぱりお芝居は掛け合いだと思っていて、相手から出されたエネルギーへのリアクションがその人のキャラクター性なので、そのリアクションを生で見ないと良いかわからないし、あてて書くならどういう人か見えた上で、合格を出したいと思ったんです。
 
幸橋:
見ているのは技術的な部分だけではないんですね。
 
どちらかというとフィーリングが合う方を選んでいます。正直、技術的にはすごくうまい方もいたし、ネームバリュー的に人を呼べるなという人もいたんですが、なんか違うなと思って採用しませんでした。
 
幸橋:
では、結局あてがきだったのは……
 
カルラ隊、カノア隊に関しては皆あてがきです。アンリミテッド・コープスなんて最初いなかったから(笑)楽団のメンバーもそうですね。楽団メンバーがいるよーくらいにしか決まっていなくて、本当はヒロ君の方がいじめっ子側だったんですよ。
 
幸橋:
本当に? 真逆ですね。
 
そうなんです。でも、ヒロ君は最後笛を吹いて、その曲がタイトルの約束ノ歌にかかるところなので、すごく重要なポジションだけど、どういうキャラだったらより歌の意味が伝わるかなと考えて、いじめられっ子にしようと思ったんです。
オーディションでは、ヒロ君のような男の子声ができる女性の方が結構多くて、悩んだのですが、ユアン幼少期も演じている中村みやさん*2にヒロ役をお願いしますと。そのみやさん演じるヒロ君にいじめる側が必要だなと思って、あのメンバーになりました。メンバーが決まってから役者さんに合わせてあてがきしました。
 
幸橋:
じゃあ、だいたいあてがきですね。
 
だいたいあてがきです(笑)最初の台本はいらなかったかなと思うくらい最初とは全然違うものになりました。でも、ボクの場合はだいたいそうで、最初に書いたものとできあがったものが全然違うので、あまりプロットは信じないでくださいと皆さんに言っています。
 

『「蛍の光/ オールド・ラング・サイン」が約束の歌』

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幸橋:
団長さんの企画は音楽をすごくこだわっていますよね。ラピス交響曲では、毎回歌曲がありましたし、約束ノ歌も歌をテーマにしていますし。
 
色んな前世を思い出した時に、ボクに共通するのは歌なのかなと思ったんです。アベルの時も楽団でいろいろあったし、今も音楽にこだわりを持っていて。好きなアニメも音楽が好きな作品ははまるんですよね。
ガンダムシリーズ宇宙世紀を全部見ているんですが、女性で二十代ということもあってすごく共感できる訳では無く、話の構成や思想哲学的なものは面白いと思うけれど、そこまではまることはなかったですが、ユニコーンは澤野さんの音楽すごく良くて、Aimerさんの主題歌との相性がめちゃくちゃ良くてハマりました。自分の根底にはやっぱり音楽があるんだなと思いますね。
 
幸橋:
そんな中で、なぜ、約束の歌が「蛍の光」だったんですか?
 
いろんな前世を見た時に知り合いにスピリチュアル系の方々もいるので、ムーとアトランティスに昔いたことがあるんですと言ったら、「沈んだ時に皆で歌った歌があったよね」と言われて、その時になんだか大事なことを忘れてないボク? こんなことしている場合? と強烈に思ったんです。
そんな中でずっと懐かしく響いているのが「蛍の光」だったので、もう一回ちゃんと聴いてみようと思ったんです。ボクはずっと日本の歌だと思っていたのですが、調べたらスコットランドの歌で、「オールド・ラング・サイン」というんですよね。原文の歌詞を見て、日本では別れの歌という印象が強いけど、オールド・ラング・サインだと再会を願って、もう一度酒をくみかわそう友よという意味で、すごく納得しました。ああ、これだ、ボクが忘れていた大切なものは……と思い出して、急きょラピス交響曲にも入れました。
 
幸橋:
アベルが教会で歌うシーンは最初はなかったんですか?
 
ありませんでした。アベルさんは闘技大会にちらっと出て来るくらいで、ユアン君ともそんなに会話をせず、この後、続きで書くカイト君のところでがっつり出て来る予定だったんです。むしろ、イソラ、ユアン編には出なくて良いかなくらいな感じだったんですが、きっと彼女は昔別れた仲間たちを探しているんだろうなと思って、わかりやすいメッセージ・サインとして取り入れようと思いました。その曲がどうしてそういう意味を持つ歌になったのかをちゃんと作りたいなと思って作ったのが約束ノ歌編です。
 
幸橋:
だから、蛍の光、オールド・ラング・サインが重要な曲なんですね。
 
オールド・ラング・サインを聴いた時、忘れていたものを取り戻したような感覚になったので、もし同じ感覚になる人がいたら、この前世は本当なんでしょう。実際にこれが本当なのか今でもわかっていないですが、そういうインスピレーションが来ることはクリエイティブなことをやているので、助かっています。
それに、そんな感覚で出来た繋がりは、ご縁が強いので、無条件に信頼できます。オーディションをやって初めましてと挨拶をしたけど、この人、知っていると感じる人や懐かしい感じがする人がいます。初対面のはずなのに敬語をすっ飛ばして、ねえねえとか声をかけたくなるというか(笑)そういう方はご縁が深い方なんだと思います。
 
幸橋:
例えば、どなたにそう感じるんですか?
 
メインキャラで選んだ方は割とねえねえと話しかけていますね。ポジションとして、マヒナさんはさすがにねえねえとまで砕けてはいかないですが。前作からまた使いたいと思った方には何かあるのかなとは思ったりします。春名さん*3やみやさん、原田さん、井川さん*4、嶋田ひかりちゃん*5、竹内奈菜ちゃん*6とか。
カルラとニアベルはボクの前世のキャラクターですが、もちろんその周りにいるキャラはそれをやっている役者さんの前世という訳ではありません。でも、作っている内にマヒナさんが誰かわかったぞとは思いました。
 
幸橋:
誰ですか?
 
マヒナさんは今、ボクの母として傍にいます。お母さんだったのかと思って、すごく泣いた覚えがありますね。ちゃんと再会できてたんだ、良かったと。弟が2人がいるんですが、彼らはカルラ隊のキーアとミノアだったなと思い出したり。ふとお会いした時にこの人は彼だ(彼女だ)という時はたまにあります。
 
幸橋:
キーアですか……彼はカルラを意識しているように聴こえましたが、恋愛感情だったのか、家族のように愛情だったのかは気になってました。
 
単純なあこがれだったと思います。孤児院出身者が多い中で、カルラは孤児院の出ではなかったので、仲良くなりたいけど、踏み込んで良いのかわからないというのが彼の中にはありました。恋愛感情というよりも姉でしょうか? 支えたいと思っているけど、半人前で認めてもらえないという感じ。そのキーアが2つ下の弟で、長男です。
 
幸橋:
まさに今の状態ですね。お母様がマヒナだとなんで思ったんですか。
 
ボクは以前から女の子に触れるのが苦手なんです。体は女なので、多少は大丈夫なのですが、不意に抱き付かれると、ううっとなってダメなんです。でも、逆に男の人は大丈夫で、弟と手をつないで歩いたりとか、男性と接触するのは大丈夫なんです。満員電車でも女性の方が近寄ってきた方が引いてしまいます。触っちゃいけないというか。
 
幸橋:
触りたくないではなく、触っちゃいけないなんて不思議な感覚ですね。
 
この世の中で一番触ってはいけない人を考えた時にお母さんには触れないなと思いました。お母さんなので、触られても嫌ではないですが、自分からはねえねえと呼んでも触るところまではいきません。で、こんな触れてはいけないという感覚を最近味わったぞと考えて、スタジオの中だ、マヒナさんと対面するシーンを収録した時だと思い出しました。マヒナの存在感とお母さんの存在感が重なるんですよね。再会できたんだったら良かったです。
 
幸橋:
他にそんな感覚はありますか。
 
アンリミテッド・コープスの4人は近く感じます。今でも一緒にご飯を食べて、日曜夜はアンリミテッド・コープスとモンスターハンターをやる日と決まっていて、仲が良いというか家族みたいな感じですね。
 
幸橋:
物語では敵同士で戦っているのに(笑)
 
そうなんですよ。ブースに入っている時や、ディレクションをしている時はそのスイッチが入ってしまって、カルラとして相手するならとか、演出するならこうだとしか考えていないのですが、編集する段階で推しの声を聴きながら、めっちゃ良い声だなと聴き入ります。で、冷静に考えると、ボク、推し焼いているなとか(笑)ボク、教会でユアンちゃんと話してるんですけど! とか言い始めます。
 
幸橋:
今更ですね!(笑)
 

『音響編集の芳野先生タイム』

 
幸橋:
音響編集をしているのは、団長さん……? ですか?
 
編集は2人がかりでやっています。ボクがやっているのは、まずはOKテイクの切り出し。結構パターンをとるんです。NGではなく、やり取りのステータスを変えてみたりとか。ドーファンとヴァールのやりとりは3パターン録ってもらいました。原田さんの年齢を操作したバージョンや、相手に対してどう思っているのかニュアンスを変えて、単純に上官として命令を出しているだけのバージョンや内心こいつのこと気に食わないと思っているバージョンなんかがありました。お2人は前作で共演しているので、そのいがみ合いが見えるようなものをもらっていいですかとお願いして。そんな風に変えたパターンをどれにするか選んで、それを音響デザインの芳野先生と呼んでいる方に投げます。そうすると、ベタばりで効果音を貼って戻してくれるので、それを聴いて、サラウンドで作っているので、ボクがキャラの位置をどうしようかと考えつつ、BGMを貼って。あのボリュームなら本来は絵コンテをきらなくてはいけないのですが、芳野先生はセンスが良い方なので、台本をぱっと渡すだけで読み解いて下さるんです。
 
幸橋:
細かく工程があるんですね。
 
ラピス交響曲ではト書きはSE、〇〇、SE、場所みたいに書いていたのですが、約束ノ歌編ではあえてト書きも小説みたいに書き方をして、情景描写が見えるようにしました。嵐の前に静けさとか、どういうSEだよと思いますが(笑)空気感や匂いがなんとなくわかるようにして、彼のセンスで読みといてもらいました。
ボクがセリフを入れて、セリフを邪魔しないようにSEを消して、立体的に聴こえるように、例えば、カナードの飛行の速度とか距離感やどこから撃っているのか、キャラがどれくらいの速度で走っているのかを考えて調整して、最終的に修正やノイズをとる作業を芳野先生がやってくれます。ボクは編集というかディレクションをやっている感じですね。
 
幸橋:
確かに約束ノ歌編はすごく立体的だなあという印象がありました。
 
普通の音響さんだったらこんなに対応してくれないだろうってくらいわがままに対応してくれて、ボクはスタッフには恵まれていると思います。
 
幸橋:
その芳野先生とは何をきっかけに知り合ったんですか?
 
芳野先生はサイトを見てくれて、ラピス交響曲の時にボクの活動に興味があるので、一緒にやらせてもらえませんかと突然メールを頂いたんです。初めてお会いした時に、思ったより若い方なんですねとか、アニメ化を目指しながらやっているんですとかお話をして、その時に予算が無いので、何十万とギャラを支払えませんけど良いんですか? と訊いたら、お金もらえるとは思ってませんでしたーって(笑)
 
幸橋:
なんと(笑)
 
かなり長期の企画ですよと言ったんですが、企画に興味があると。約束ノ歌編をやる時は団長の本が好きだし、いつも楽しませてもらっているので、お気になさらずと言われて。じゃあ、今回も深夜からの芳野先生タイムがあっても大丈夫ですかと。
 
幸橋:
芳野先生タイム?
 
ボクたちは固定の仕事についているわけではないので、お互いに締め切りさえ間に合えば、どこで何していても何時に活動していても良いという生活をしているんです。クリエイターは夜型になりがちじゃないですか。音響セクション会議がだいたい26時くらいからスタートして朝方までやってるんです。
 
幸橋:
確かに(笑)私は朝方なんですが、4時とかにTwitter見ると団長さん起きてる! と思います。で、遡るとこれはずっと起きてるな、と。
 
そんなことが多くて、夜通し通話しながら対応してくれる音響さんなんてこの世であなたしかいないと思います、ありがとうございますと言っています。お互いに話しながら作るのは楽しくて、約束ノ歌編の編集が終わって芳野先生タイムがないのかというロス状態です。芳野先生タイムが懐かしいですと言うとまた作りましょうって言われました。
 
幸橋:
優しい!(笑)
 

『好きなサークル、作品、演者さん~初めて出会いました~』

 
幸橋:
予想外に団長さんが同人作品を知ってそうで、わくわくなんですが、団長さんはどんなサークルさんや作品が好きですか?
 
ハーモスフィアさんはすごく好きですし、NOMARKさんやHEAVENLY BLUEさんのような完成度が高いものも好きです。シリアスもテンポが良いものも、ミュージカルも好きですが、自分の中でひっかかるのは、「宇宙」がテーマのものですね。SFが好きなんです。
 
幸橋:
SFと言えば、ハーモスフィアさん良いですよね。
 
「Signals」*7が最初衝撃でした。聴いていて、ふと思い出す感じがあって、ハーモスフィアさんは短編でも宇宙関係の作品を出されていますが、クローカの呼吸とか、はあ……とため息が出ます。
 
幸橋:
すごい! クローカの呼吸を挙げる方に初めて出会いました!(ガタッ)あれは名作だと私はずっと言い続けています。
 
音声だからこその良さというか、ああいう凝縮した小さい話を書けないので良いなと思います。ハーモスフィアさんのイメージが、夜、静けさの中の音という感じで、静寂の中の表現がうまいですよね。BLCDも聴きますが、ボイスドラマを自分のお金を払って買うなら文学よりのものを聴きがちなので、ハーモスフィアさんはドンピシャです。サウンドドラマなのに、静寂という表現がピカイチ。自分が五感の中で聴覚が一番敏感なので、音声を聴くとなった時に、ボイスドラマとして聴く価値があるのはハーモスフィアさんですね。好きだな聴いていて楽しいなと思うサークルさんはたくさんあるんですが。
 
幸橋:
確かに。それでは、好きな演者さんは?
 
アンフィニさん*8の声が好きですね。落ち着いているけど情緒があって、不思議なトーンでしゃべられるという印象が強いです。
 
幸橋:
うんうん、わかります。他にはいらっしゃいますか?
 
好きな人はいっぱいいますね。ヨッシ~バランさん*9とか。あの界隈であの渋さってあまりないですよね。いつかお声をかけたいけれど、高校生の時からずっと聴いているから、ファンですと言うだけになりそうです。まめこさん*10も良いですよね。歌い手としての声も良いなと思います。
 

『今後の予定 』

幸橋:
では、今後の活動を教えて下さい。
 
このインタビューが出るころには終わっているかもしれませんが、月影クリエイターズでは他団体さんともコラボして裾野が広い活動をしているので、5thオーダーとして「晴タ空」*11というお2人とコラボしてリーディングライブをやります。ニコニコ動画の歌い手さんで、晴タ空のくっきーたんさん*12には今回約束ノ歌編にも出て貰っています。
 
幸橋:
あ、アオ役の方ですね! モノローグすごく好きでした。団長さんは、脚本で関わってるんですか? それとも出演?
 
シナリオ原案でも関わっていますし、団長のキャラで出ます(笑)狛犬2人が廃れて参拝客が来なくなってしまった神社のプロデュースをするという話です。ニコ動のファンの方が多いと思うので、お客さんの願いを叶えるというコーナーを作ったり、エンターテインメントという形でお送りします。
で、実は動画も音楽もキャラデザもうちが協力しています。主題歌はラピス交響曲でも作曲を担当した藤宮彩音さん*13、イラストがあーさん*14、動画もYU‐KAさん*15で。
 
幸橋:
全面協力ですね(笑)あれ、そういえば、団長さんもリーディングライブをするという風の噂が。
 
年末……に出来るかなーという感じです。先に約束ノ歌編の上映会をすると思います。
 
幸橋:
上映会! するんですか?
 
映画みたいなボリュームになったので、スピーカーで聴きたいですという人が多くて。小さい映画館かお店を借りるかは検討中なんですが、皆で良い音響設備で聴こうということになっています。最初はプラネタリウムと言われたけど、手配が難しくて(苦笑)
 
幸橋:
あれは確かにスピーカーで聴きたいやつですね。召喚のシーンとか(笑)
 
収録の時も、ファイナルファンタジーを思い出してくださいとか、ラピュタを思い出してくださいとか、ラピュタの火で焼くんですとか。
 
幸橋:
ラピュタ(笑)確かに。
 
上映を年内にやって、リーディングライブはやりたいですが、いろんな主催団体さんにお会いして、どれくらいの規模感でやろうか悩んでいるところです。見に来てくれる人がいるのかなと心配で。年内に試験的に小さい規模でやるかもしれませんね。
 
幸橋:
行きたい!
 
本格的にやるなら来年に数日かけてやりたいです。オムニバスで作って、場所によって組み替えて上演できるように。プラネタリウムでやりたいとか劇場でやりたいとかお店を借りてピアノ生演奏でやりたいとか案が出ていて、演者さん、クリエイターさんからもやりたいという声が上がって来ているので、身内では盛り上がっています。
 
幸橋:
お話はどんな感じになりそうなんですか? これからですか?
 
月光と親和性が高いかなと思って、星座をモチーフにと考えています。月影クリエイターズが宿星をなぞる旅を主題に持って来ているので。でも、プロットを書いてみたら、またやってしまった……という感じになっています(苦笑) これスターウォーズかな? とか。
 
幸橋:
あれ、可愛らしい感じを予感していたのに、大戦が始まりそう。それも面白いですが(笑)
 
リーディングライブは月光ギルドと言えばこれという目玉にしたいという気持ちはあります。あと、リアルでお会いする機会を作りたいですね。ネット上だと団長はただの不思議生物なのですが、対面でお会いするとファンになってくれる人が多いんですよね。
 
幸橋:
わかります! ネット上のちょっとハイな感じの団長さんを想像してお会いしたら、静かで物腰柔らかで、あれ? 団長さん? と密かに思っていました(笑)あ、褒めてますよ。でも、印象がだいぶ違います。
 
普段はこんな感じなんですよ。ネットでは可愛らしくいこうと思って、団長のあのキャラにしていますが、お会いするとちゃんとした人なんですねと言われます。
 
幸橋:
すみません、私も言いました←
 
なので、「読み合わせクエスト」というのをやっていて。
 
幸橋:
読み合わせクエスト?
 
過去に没になった作品のシーンを切り出して、役者さんに好きに読んで遊んでくださいという現場があるのですが、それを6月から復活します。ぜひ遊びに来てください。今回はオーディションを兼ねています。そういうところでお会いした役者さんは何かあると来てくれますし、ファンでいてくれるんですよね。
 
幸橋:
読み合わせクエストはどのくらい開催予定ですか?
 
6月から週一でやる予定です。いろんな役者さんとお会いしたいし、遊びたいんです。実は、自分の作品をいろんな役者さんにいろんな角度でやってもらって、こういうものを作りたいと考えるインスピレーションの場でもあるんです。そこで出会いがあったら、またあてて書いてそうですね(笑)
あと、月光ギルドや月影クリエイターズは、収録現場の楽しさが魅力だと思うので、わいわいやっているのをお客さんにも共有したいなと思っています。そういう意味でもリーディングライブはやりたいですね。
 
幸橋:
そんなにイベントが盛りだくさんだと、音声作品はしばらくお休みですね。
 
どうでしょう? 8月以降のスケジュール入れたらダメと言われていますが、小さい作品はやるかもしれません。ぎるらじ内のミニドラマに人を呼んでやるつもりなので、大々的にはやらないかもしれませんが、ふいに出すことはあるかもしれません。
 
幸橋:
それでは、リーディングライブと共にそちらも楽しみにしています!
 
団長さんこと、月詠深琴さんへのインタビューは以上です!
ありがとうございました!
 
『後記』
以前から月光ギルドさんのコンセプトに興味があり、どこかの機会でお呼びしたいなと思って、今回、それが叶いました。最初から前世とか、月読命といった話になり、目が点になりかけたのは正直なところです。でも、きちんと筋道立って話されているし、ご本人が仰るように真実かはさておき物語として面白い。団長さんのぎるらじファンである理由の1つですが、あの声で、お話がうまいからついつい聞き入ってしまうんですよね(笑)結果、過去最長のインタビュー記事が出来上がりました(頑張ったよ!)
 

***
インタビュアー/幸橋

幸橋 (@kusanotsuki) | Twitter

ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が900件を突破(2018年1月時点)

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※①作品の基礎情報(注釈)は幸橋が追記致しますので、おすすめポイントだけお書きください。
※②最後の回答以外、出来るだけ、ネタバレは避けて下さい。
※③多少の加筆修正をお願いする場合があります。
※④どうしても書けないものは回答をとばしても構いませんが、基本全問回答してください
※⑤各質問、回答は基本は1つ(最大3つまで)でお願いします。
※推奨※先にワードやメモ帳などで書いて、コピペすることを推奨致します。
***

*1:原田達也さん。T-182名義で活動している場合も。安定した低音ボイスの演者さん。ご自身で朗読劇を主催することもしばしば https://twitter.com/T182voice

*2:優しい声音の少年声が素敵な女性演者さん https://twitter.com/miya_nkmr

*3:春名生子さん。独特の気の強い女性や少年声が特徴的な女性演者さん https://twitter.com/haruna_shoko

*4:井川直紀さん。厚みのある低い声が特徴的な男性演者さん https://twitter.com/ga_n_i_hokkaido

*5:優し気で涼やかな声が素敵な女性演者さん https://twitter.com/da_shiman810

*6:声優さんであり、コスプレイヤーさん。声は気が強い中にも情が厚い感じ(by幸橋) https://twitter.com/nana_voice77

*7:ハーモスフィアさん企画の宇宙をテーマにしたオムニバス作品。Podcastで無料視聴が可能 http://www.harmosphere.net/signals/

*8:独特の空気感と声音を持つ男性演者さん。声の中毒者が多い http://infini-voiceact.wixsite.com/infinity

*9:独特の低音ボイスで中年男性の役が多い演者さん。ご自身で企画をすることも http://yossybalan.nomaki.jp/

*10:同人音楽サークル「Mamyukka」の歌唱担当。歌唱・演技にて出演作品多数 https://ameblo.jp/maiko-endo/

*11:歌い手のくっきーたんさん、とらまるさんのユニット https://twitter.com/HaretaSora_info

*12:歌い手、演者。いい声の人って覚えて欲しいらしい(確かに良い声。モノローグ合いますねby幸橋) https://twitter.com/cooky_tan

*13:作曲・作詞で活動。月光ギルド、月影クリエイターズなどへの曲提供をしている https://twitter.com/fenix_ra_mia

*14:フリーイラストレーターさん。ラピス交響曲・約束ノ歌編にてメインビジュアルを担当 https://twitter.com/pasanako

*15:アニメーション撮影・動画製作・ロゴデザイン・イラストレーターとして活動 https://twitter.com/YU_KA_223