ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」

「ボイスドラマ」をテーマに、インタビュー記事をメインコンテンツとして配信しています。今後、ボイスドラマに関わるイベントや新作の告知、作品紹介コラムも増やしていく予定。

第2回『みや。さん』 ~後半~【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】

 ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」の第2回「みや。」さんインタビューの後半です!

前半がまだの方はこちらから先にどうぞ。

http://voidratohito.hatenablog.jp/entry/2

 

後半の内容はこちら!

<目次>

『人のゆがみをエンターテインメントに』 

f:id:yukibashi:20170915233613j:plain

 
 
幸橋:
これを言うとみや。さんが性格悪いと言っているように聞こえるかもしれませんが……
 
みや。:
どうぞどうぞ。
 
幸橋:
私はおにぎりワゴンさんの特徴は人間のリアルな歪みを作品のエンターテイメント性に昇華させているところだと思うんですよね。ただつらつら人の嫌なところを描くだけじゃなくて、リアルなんだけど、それを作品の面白味にしているというか。
 
みや。:
人のゆがみを表現したいというのは作風を振り返ると確かにあると思いますね。エンターテインメントになっているのかは不安だったので、それを聞いて安心しましたが。
 
幸橋:
デフォルメ化されているんですが、テンプレではないんですよね。こういうセリフやシーン他にもあるよなあとは思わないんです。
 
みや。:
キャラクターの感情が嘘にならないようにはしていますね。そのキャラクターが突拍子もないことを言ってもその子なりの感情の流れにしたいと思っています。
 
幸橋:
それはみや。さん自身が演者さんだからというのはあるのでしょうか。
 
みや。:
それはあると思います。都合の良い展開にせずに、このキャラだからこう思うだろうと思ってセリフを書いています。実際に書いていく内にキャラの動きたいようにしています。
 
幸橋:
でも、みや。さんの作品って、ちゃんと整理されていますよね。私、勝手に「企画者脳」って呼んでいるんですが(苦笑)結構、演者さんはやりたい事をやりたいように詰め込む「足し算」をされるイメージなんです。もちろんそういう作品も大好きですよ。でも、ちゃんと整理されている作品を見ると、この企画者さんは余計なものを「引き算」が出来る人だ、つまり、「企画者脳」の人だと思ってしまうんです。みや。さんはその「企画者脳」の方だなと思います。
 
みや。:
書きっぱなしにはしませんよ(笑)感情が乗っているところでも、必要ないと判断すれば、バッサリ切ったりしますし。
 
幸橋:
「ゆがみ」に話を戻してしまうと、最初に出て来るのは「ブーゲンビリアにくちづけを」*1をなんですよね。
 
みや。:
ブーゲンですか(笑)
 
幸橋:
あれは脚本家としてのみや。さんがすごい! と感激した作品で、女性たち、特に学生の時のどろどろ感というか、負の仲間意識がリアルだなと思いました。
 
みや。:
ブーゲンビリアは一応、同性愛作品なんですよね。
 
幸橋:
一応は(笑)
 
みや。:
ネタバレにならないように(笑)でも、実は制作当時は百合作品があまり好きじゃなかったんです。女性同士の恋愛に何も感じなくて。
 
幸橋:
わかります! 百合作品って深窓の令嬢というか耽美な世界が描かれているものばかりでなんだか違うんですよね。
 
みや。:
そう、女なんて汚いですよ。友情と恋愛感情の間で嫉妬するし、女なんてきれいなものじゃない。そういうのを書きたかったんです。
 
幸橋:
その汚い部分を書いてくださったので、ブーゲンビリアは百合作品の中でも名作だと思っています。
 

『実体験を物語に昇華』 

 
幸橋:
ブーゲンビリアもなんですが、「拝啓、お元気ですか」*2という短編も同じ匂いがしますね。
 
みや。:
「拝啓、お元気ですか」は実体験を物語に昇華したいと思って作りました。後悔を作品を通して救いたかったんですよね。いじめたこともいじめられたこともあるのですが、その時の感情が人生の中でも特に強かったんです。
その時の感情が反映されているのがこの作品です。
 
幸橋:
言ってしまえば、いじめはよくある題材なんですけど、この作品でおにぎりワゴンさんらしいなと思ったのは、いじめをしてしまった側に後悔だけではなく、「優越感」があることなんですよね。
 
みや。:
いじめる方って、罪悪感もありますが、仲間内のよくわからない楽しさもあるじゃないですか。人間はずるいところもありますが、その感情を救いたいと思いました。
 
幸橋:
実体験やご自身の感覚が作品に反映されているようですが、自分とは全く逆の存在の場合はどうしているんですか? 
 
みや。:
自分にないものは、逆を取っていきますね。自分はこう思う、という事は真逆の人間は逆のことを思うはずだと考えるんです。自分にない感情を考えるのは好きですよ。LAST desireの翔太なんかは、彼の境遇は体験できるものではないですが、彼の感情をなぞることはできますから。
 
幸橋:
自分に近しいキャラも逆のキャラも自分の感情から引き出すんですね。
 
みや。:
そうですね。
 

『感情の言語化』

 

幸橋:
さっきも言ったんですが、おにぎりワゴンさんの作品はデフォルメ化されているのに、テンプレという感じがしないのは、全て外から取ってきたものではなく、みや。さんの中から出てきたものだからなんですかね。

 

みや。:
そうなんですかね。昔から行動や感情を分析して言語化することが多いんです。1人反省会と言うんでしょうか、なぜ嫌な思いをしたのか、なぜ相手は嫌な顔をしたのか。そんな風に分析するのはストレスであんまり好きな部分じゃないんですけどね。でも、それが感情を言語化する訓練になっていたのかもしれません。昔、漫画を描こうとしていたことがあったんですが、漫画で表現出来なかったことも脚本だと表現できたりするんです。

 

 幸橋:
みや。さんは言葉で表現する方が適しているんですね。私は実は小学生から高校生まで油絵や水彩画を描いていたんですが、そのためか私の中で感情は言葉ではなく、色で表現するものだったんです。だから、感情は常に曖昧にしか認識できなくて、明確な言葉で表せるのはすごいと思います。

 

 みや。:
ありがとうございます。私の言葉は小難しくなくて、とてもシンプルです。だから、このキャラの感情はわからないけれど、何を言ってるのかわからないというのはないと思います。

 

 幸橋:
おにぎりワゴンさんの作品は良い意味でとてもフィクションであり、最初に言ったようにエンターテイメント性があるのは、そのシンプルさにも理由がありそうですね。

 

『ボイスドラマ制作は常に挑戦』 

 
幸橋:
おにぎりワゴンさんの作品はいろんなジャンルの作品がありますが、これは狙っているんですか?
 
みや。:
ジャンルをばらけさせようという意図があった訳ではありませんが、ボイスドラマを作る時は何か新しいことに挑戦するようにしています。LAST desireであれば、長編は聴かれない、バトルは無理という考えに対して、違うはずだと。
あと、最近では「ユメトキ」*3で聴いている側も謎解きが出来る作品を作りましたし。
 
幸橋:
確かに。でも、シリアスでもギャグでも何を作っても、おにぎりワゴンさんの代表作と言える作品ばかりですよね。
 
みや。:
ありがたいことに、おにぎりワゴンが強いジャンルというのは人によってばらけますね。
 

『今後の活動』

 

幸橋:
最後に今後のご予定を伺いたいです。

 

みや。:
LAST desireの公式ガイドブックを秋に出す予定です。皆、願いがあって参戦していますが、作中では明確に言っていないキャラもいますし、他にも作中に出てこない設定があるので、それをまとめたものを出そうと思っています。ショートストーリーも付く予定です。
あとは、秋のM3で新作を2作品出す予定です。もしかしたらセットになるかもしれませんが、どっちも聴くと世界観がわかる作品になっています。

 

幸橋:
風の噂では、おにぎりワゴンさんはボイスドラマ制作をやめられると(泣)

 

みや。:
そうですね。秋の新作はキャストスタッフさんにも最後の作品だと言ってお願いしています。

 

幸橋:
なんでやめてしまうんですか?

 

みや。:
さっきも言ったようにボイスドラマは何か新しいことをしたくて作っていたのですが、新しい何かを生み出せるような気がしないんです。これまでやってきたことをなぞるだけになりそうで。
あと、ゲームを作りたいと思っているので、そちらを優先したいと思っています。

 

幸橋:
さ、さみしい……(号泣)

 

みや。:
個人ではやりませんが、脚本を書いて誰かと一緒にはやると思いますよ。アストロモノグラフィ*4とか?

 
幸橋:
なんと! では、みや。さんの脚本作品を聴くのは最後ではないんですね!(復活)その前に新作もありますもんね。
 
みや。:
はい。秋に出すものも試行錯誤して挑戦しているので、ぜひ聴いて下さい。
 
 
以上です!
みや。さん、ありがとうございました!
 
『後記』
今回、みや。さんにお声がけしたのに「LAST desire」が完結したのが第一の理由でした。これはボイドラの中でも名作と言われる作品の1つになると思います。
一方でおにぎりワゴンさんの作風もつっこんで聞きたいなと思っていましたので、深い話を聞けて満足です(笑)
みや。さんの感情を言語化する力というのは時たまぽろっと出て来る一言にも感じる事が出来ました。見出しつけやすい!←
おにぎりワゴンのボイスドラマ作品の発表は次は最後ということですが、出演や脚本でのみや。さんの今後の活躍に期待です。
 
***
インタビュアー/幸橋

幸橋 (@kusanotsuki) | Twitter

ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が700件を突破(2017年6月時点)

*1:中学生の時に仲が良かった椎名と春子。とある事件から疎遠になった彼女たちは数年後、同じ大学の学生として偶然再会する。http://onigiriwagon.sakura.ne.jp/bg/

*2:中学生の時にあった事件の懺悔を手紙形式で語る短編。http://onigiriwagon.sakura.ne.jp/haikei/

*3:おにぎりワゴン、空想科学研究所、iDearoomの3サークルが合わさった「おにぎり研究ルーム」の作品。夜の図書館に閉じ込められた瀬七とゆかりと共に謎を解く謎解き系ボイスドラマ。http://yumetoki.idearoom.jp/

*4:みや。さん、ユキトさん、あこさんの3名の企画者がメンバーのボイスドラマ制作サークル。http://asmono.eek.jp/