ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」
第6回は「九重仕立ての
ミルフィーユ」を作成する
十六夜工房の
忠誠心(門田豪司)さんです!
舞台作品を手掛けていた
十六夜工房さんがボイスドラマ作品の作成を始めたきっかけや#3まで頒布された「九重仕立ての
ミルフィーユ」について、そして、様々なジャンルの物語を書く中で一貫して考えていることをお聞きしました。
幸橋:
本日のゲストは
十六夜工房の忠誠心さんこと門田豪司さんです! 私が普段、忠誠心さんと呼んでいるので、ここでは忠誠心さんで統一しますね。よろしくお願いします!
忠誠心(門田豪司)さん(以下、忠誠心):
よろしくお願いします!
幸橋:
実は忠誠心さんは自薦というか、立候補だったんですよね(笑)アピール大事。
忠誠心:
図々しくてすみません。
幸橋:
いえいえ、こんな企画に有難いことです。それに追々お声がけする人リストには入っていらっしゃったので。でなければ、出たいです! と言われて即やりましょう! にはなりませんよ(作品複数聴いてないとインタビューできない人←)
忠誠心:
なら、一安心ですね(笑)
『ボイドラの作品を作成し始めたきっかけ』
幸橋:
では、早速。元は舞台にいらっしゃった忠誠心さんがこのボイスドラマというジャンルを知ったきっかけは何ですか?
忠誠心:
始めた時、ボイスドラマについてがっつり知っていた訳では無いのですが、学生時代にラジオを聞いていたので、前から声だけの作品は聴いていました。
幸橋:
それはどの番組ですか?
忠誠心:
声優さんも聴き知っていましたが、アニメよりも吹替の声優さんの方が聴いていましたね。
幸橋:
脚本はいつ頃から書き始めたんですか?
忠誠心:
高校の時にゲームのシナリオを書いていました。大学は音楽活動をしていたので、その合間にシナリオ書いていたくらいです。
以前の仕事場で同じ十六夜工房の佐山*1に会い、気が合って一緒に芝居をやらないかという話になって舞台の脚本を書くようになりました。
ボイスドラマは佐山が先に知って活動を始めて、そこから自分たちでも作ってみる? と言われて始めました。
幸橋:
舞台の脚本とボイスドラマの脚本は勝手が違うかなと思うのですが、書くにあたって何か参考にした作品はありますか?
忠誠心:
ここミル
*2書き始めた時点では参考にしたボイスドラマ作品はありませんね。
青春アドベンチャーで聴いた作品を思い出して書いていました。
書いた後に佐山が出演した作品を中心に、話のテンポやセリフの距離感の資料としていくつか聴いたくらいです。
幸橋:
そうだったんですね。別ジャンルから来た方の脚本ってうまく説明できないのですが、小説なら小説、舞台なら舞台、ゲームならゲームの癖みたいなものを感じるのですが、忠誠心さんの脚本にはそれが無くて、さっと切り替えが出来て器用な方だと思っていました。
忠誠心:
器用だなんて初めて言われたかもしれません(笑)
幸橋:
でも、どこかで書き方を学んだということはないんですよね?
忠誠心:
はい、我流ですね。ただ、前の仕事でアニメ関係のシナリオを見る仕事をしていたので、これくらいの文字数ならこれくらいの時間という目安くらいはわかりました。
舞台でも音声でもそれぞれの特色はわかるので、それに合わせて書いたので違和感が少ないのかもしれませんね。
例えば、音声だけだと、声質が似ていて誰が誰だかわからないとまずいので、オーディションでは被らないようにしたり、キャラがたくさん出て来るまでにこのキャラはこういうやつだとわかるようにしたり。ここミル#1は1シーンに出て来るキャラを限定しています。
幸橋:
1シーンに出すキャラは3人まで、というのはよく聞きますね。
忠誠心:
#3は1シーンにたくさん出してますけどね(笑)
あとは舞台は視覚情報は書かなくて良いけれども、ボイスドラマはキャラが説明しなくてはいないとか。
幸橋:
でも、忠誠心さんの台本はそんな説明台詞はあまりないイメージです。
忠誠心:
自分のもとからの書き方ではあるのですが、頭の中に映像があって、それを見た上でメモに取っている感じで脚本にしているんです。
口で説明しながら会話することは普通はないので、脚本でもあまりないようにしています。なので、別の方法で意識して説明するようにしています。
幸橋:
例えば、どんな風に?
忠誠心:
SEを入れると思うのですが、佐山に先に入れてもらって、その後細かく修正してもらってます。人との距離感とか、例えば、ここミル#3で敷島探偵事務所のシーンがあるのですが、部屋の空間を広く感じないように歩幅を狭くして貰ったり。それで言うと#3は大半はゲームの中が舞台だったので距離感を考えなくて良いのは楽でしたね。
幸橋:
空間も考えているんですか? 音響さんが音の響き方を考えるのは聞いたことがあるものの、凄いですね。
忠誠心:
空間を表現しているのは舞台をやっているからかもしれませんね。でも、編集をしている佐山も舞台を経験しているので、リテイクを出す時にそうだよねと理解してくれます。
幸橋:
では、何か手本があるというよりもやはりご自分の経験から作っているという感じですね。
忠誠心:
はい。舞台ばかりでボイスドラマ界は全然知りませんでしたね。
幸橋:
正直な話。ボイスドラマを初めて聴いてみた時はどう思いましたか?
忠誠心:
そうですね……立体感が欲しいなとは思いました。作品によるとは思うのですが、立体感があって目を閉じたら情景を思い浮
かぶようにしたいなとは思いました。
皆さん、どういう風に聴くんだろうとも考えましたね。イケボだーかっこいいーと声で満足している人もいらっしゃると思いますが、ストーリーを聴く場合は、すっと入って来るものを作らないとなと思いましたね
幸橋:
そして、作り始められる訳ですが、ちなみに私、ここミルを知ったのは、たぶん井折さん
*3や杉宮さん
*4のツイートだったと思うんですよね。で、キャストさんを見て、すごくベテランというか実力のある方ばかりだなという印象でした。
忠誠心:
最初から出演者はオーディションで決めていたのですが、来たのは佐山と監督の
長門さん
*5の2人の人脈だったと思います。
オーディションでは、意図をあまり伝えずに作中の台詞を演じて貰いました。その中に重要なセリフを脈絡もなく置いていたのですが、何かしら意図を汲んでくださった方にはぜひとお願いしましたね。
幸橋:
出演者も気になる方が多かったのですが、実は一番気になったのが、
長門さんなんですよね。クレジットにお名前があることに気づいた時びっくりしました。
忠誠心:
そうなんですか?
幸橋:
長門さんってりべりおん
*6という団体の代表さんじゃないですか? 私、ディスドライブ
*7という作品を確か2012年くらいに聴いているんですね。
女装男子が出てくるので、よくある萌設定を押して来るタイプの作品かと懸念しつつ、とりあえず聴いたんですが、思いの外、きちんと作られた作品で、密かにおすすめの1つだったんです。
忠誠心:
なるほど。
幸橋:
でも、それからずっと作品が出てなかったので、ああ、活動やめられたのかなーと思って、おすすめとも言って来なかったのですが、それがいきなりここミルに名前があって、「ふぇ!!??」という感じでしたよね。
忠誠心:
そうでしたか(笑)
長門さんは佐山との繋がりなので、機会があれば佐山に訊いて欲しいのですが、ボイスドラマを作る時に何も知らないので、経験者の
長門さんに相談して
長門さんが音響監督やるよーと言って下さったんですよね。
気さくでこちらの意図を尊重してくれて良い方ですよね。ここミルでは音響・録音演出と加工編集をお願いしています。
幸橋:
個人的には作品を聴く限り相談相手としてはとても適切な方を選ばれたと思いますね。
『九重仕立てのミルフィーユの謎』
幸橋:
忠誠心:
それしか出していませんからね。
幸橋:
みんな気になって訊きたいけど訊けないと思っているんですが、ここミルはその名の通り9つの物語からなる作品という事で良いんですよね?
忠誠心:
そう、ですね……
幸橋:
なぜそんな微妙な反応を……
忠誠心:
9話くらいの話のつもりでいるんですが、番外編というかおまけにあたるアペンドもあるので。ああいうの好きなんですよね。
なので、「本編」は9つにできたら良いなと思っています。
幸橋:
ここミルはようやくシリーズらしく何度か出て来るキャラが出始めましたが、各話完結と言っても良い造りで、それぞれジャンルもバラバラですよね。元々はどういう作品を作りたいと考えて、ここミルのような作品を作り始めたんですか?
忠誠心:
正直、
思いついちゃったのが九重仕立てのミルフィーユだったんです。
自分の好きなことをやろうというのは、最初から思っていました。最後には統一させるつもりでいるのですが、聴いている人がいろんな面で楽しめれば良いなと思っています。なので、真面目な話だけ、ギャグだけといった決まったジャンルにしようというのはありません。
その場その場で作品のテーマを決めています。
強いて言うなら、とあるキャラクターに焦点があたると思います。現段階では、誰だよ! と思うと思いますが(笑)
幸橋:
誰でしょう?
ネタバレにならない程度に言うと#1の主人公だったハジメ君が#3にも出て来るじゃないですか? だから、彼かな? とは思ったり。
忠誠心:
あまり多くは言えませんが、ハジメ君は今後も出て来ると思うので、彼にも注目はして欲しいですね。
あと
スターシステムが好きなんですよね。実は自分の書く現代のお話はほぼ舞台が一緒で、ここミル#3には舞台作品の処女作のサブヒロインが出てきますし、アペンドで敷島さんが言っていた
スウィーティー☆りんりんというキャラは、コミュニティラジオ用に書いたラジオドラマのキャラです。
幸橋:
なんと(笑)私も
スターシステム好きなので、キャラを探してニヤニヤしたい。
ハジメ君の場合は、
スターシステムではないですが、#3で再登場した時に印象が変わって、シリーズものの面白さを感じましたね。#1ではただ良い子という感じで、他にもっと好きなキャラがいたんですが、詳細はネタバレになるので伏せますけど、#3で一気に一番好きなキャラに躍り出ました。
忠誠心:
自分の書く物語で主人公が色が薄いことは多いんですが、ハジメ君はわざと最初からそのつもりで書いていましたね。いつかかっこよくなると思いましたけど。
幸橋:
彼が今後も出てくると知って嬉しいです。
ぶっちゃけ、ここミルはどこまで決まっているんですか?
忠誠心:
なんとなくは最後まで決まっていますよ。プロットは#4、5まではあります。
ただ、昔からキャラに結末を決めてもらうという傾向がありまして、キャラを導いてあげるものの、最後にどうするかは彼らが決めるんです。
ここミル#2もそうでした。あの結末にはなるべくしてなったなとは思いますが、途中までどう解決するのか自分でもわかりませんでした。
幸橋:
ああ、わかります。#2だけなんだか他と雰囲気が違いましたよね。#1は探偵ものので持ち込まれた依頼を解決するという目的があり、#3もゲームを生き残るという目的があるけれど、#2に関しては女子高生3人組の不和について、相談されるミナミがちゃちゃを入れるだけでどこにむかっているんだこれは……と思って聴いていました。
忠誠心:
#2は特殊でしたね。結末は3回くらい書き直しました。
ああいう話は書いた事がなく、毎章種しか蒔いてなくて、最後にぼんっと一斉に芽を出すという感じの話でした。
後半に続きます!