ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」

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第7回『杉宮 加奈さん』 ~後半~【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】

こちらは第7回杉宮加奈さんのインタビューの後半です。
前半がまだの方はこちらから先にどうぞ!

『印象に残った作品』

 
幸橋:
多くの作品に出演されてきた杉宮さんですが、その中でも印象に残っている作品は何ですか?
 
杉宮:
難しいですね。挙げたらキリがないのですが、2つに絞るなら、先ほど名前が挙がった「生まれる。~Real Wonderland~」と「柳國戦物語」*1ですね。
 
幸橋:
それぞれ選んだ理由を伺っても?
 
杉宮:
生まれるは収録時間が短くてピンポイントでみんなで頑張った思い出があります。その追い込まれ感が作風ともリンクして印象に残っていますね。そして、演じた魔女さんがねちっこくて、真綿で首を締め付けるような演技がすごく楽しかったです。キャラの印象も強いですが、収録時の精神と時の部屋に入ったような濃度が忘れられないです。
 
幸橋:
生まれるはあの独特な感じにあてられるというか飲まれるというか。
 
杉宮:
まさにあてられるという作品ですよね。
 
幸橋:
柳國戦物語はどうですか?
 
杉宮:
柳國戦物語は 3年半という長い期間関わっていた企画なので思い入れが強いです。
 
幸橋:
1章からリアルタイムで追いかけていましたが、3年半もやってたんですね。演じられている柳妃も1章で故人になったので、そこで終わりかと思いきや、結局毎回出ていたような(笑)
 
杉宮:
1、2章と最後は収録に行って、3章は収録には参加していないのですが、セリフは使われていたので、柳妃が出てこないのは4章だけなんですよ。でも、1章の収録の時に私もこれで終わりと思ったので、これが最後で、第1章は皆聴くから限りある時間を生き抜こうと頑張りました。
結局最後まで参加して、また、収録に参加しない時もLINEで企画の進捗管理をしていて様子はわかっていたので、3年半ずっと一緒にいる感じでしたね。
 

『事務所所属で同人作品に』

 
幸橋:
杉宮さんは、プロダクションギウ*2という事務所に所属されていますよね。
 
杉宮:
はい、本当はスタジオギウというゲームメーカーさんなのですが、新しいゲーム作るために声優を募集して、その募集で集まった演者の中から何人か声をかけて声優事務所を作ったみたいですね。
 
幸橋:
声優事務所というのはどういう取り決めになっているのか不勉強でよくわかっていないんのですが、杉宮さんは商業同人と名前を変えずに多くの作品に出ているのが珍しいなと思っているんですよね。同人活動に制限はないんですか。
 
杉宮:
この事務所に関しては制限はありません。基本宅録メインでゲームボイスを提供したり、他からオーディションの話があれば、紹介してもらって仕事を貰っうという形ですね。
所属するにあたっての条件でもこれまでの活動を続けて良い、名前を変えなくても良いと言われています。
 
幸橋:
へえー、事務所さんは同人活動に厳しいイメージだったので、気になっていたんですよね。
 
杉宮:
普通はそうだと思いますよ(笑)
 
幸橋:
いろんな形の事務所さんがあるんですね。
 

『あなたもM3スタッフになれる!』

 
幸橋:
せっかくM3の時期なので、M3スタッフとしての活動も聞きたいなと思うのですが、スタッフはいつ頃からされているんですか?
 
杉宮:
最初は知り合いの繋がりで誘われて、会場アナウンスが男性だと声が届かないから女性が良いと聞いて、それなら手伝いますよーと。でも、やっぱり会場アナウンスだけという訳にもいかないじゃないですか(笑)前日設営や後片付けを手伝ったりする内に固定スタッフになりました。2006年~2007年くらいの時ですね。他のTEPSメンバーも同じ感じで6人中4人がM3のスタッフになりました。
 
幸橋:
サークル参加からスタッフへという感じなんですね。TEPSさんや杉宮さん個人はいつからM3に?
 
杉宮:
2000年春にTEPSが初参加をして、私は2002年の秋ですね。まだPiOの時代ではなく、浅草橋の東商センターでした。
 
幸橋:
そうなんですね。余談ですが、私は2009年秋が初なので、横浜の大さん橋ホールが初M3だったんですよ(笑)
というのはさて置き、M3は音楽サークルさんが大部分ですが、スタッフさんもボイスドラマの方はいらっしゃるんですか?
 
杉宮:
第1回からRBCさん*3がスタッフして参加されていますよ。だから、ボイスドラマも最初からM3を支えていたジャンルで肩身が狭くないよ! と言いたいですね(笑)
 
幸橋:
やっぱり昔に比べてボイスドラマサークルは増えましたか。
 
杉宮:
増えましたね。ボイドラサークルで島が出来るくらいですから。時期が曖昧なのですが、たぶん2005年くらいかな? これまでのような実際に集まって収録するサークルと違って、宅録で収録した音声をオンラインで集めて作品にしてM3に出すサークルさんが出て来たように思います。NOMARKさん*4HEAVENLY BLUEさん*5がM3に出て来た時期でしょうか。それで、ボイスコさんたちがM3とは何だ? と興味を持って、オフ会のような感覚で参加して、自分たちも出ようということでわーっとボイスドラマサークルが増えた感覚です。
 
幸橋:
M3に参加するボイスドラマサークルの傾向というか、変遷はあるんですか。
 
杉宮:
傾向というか、最初の現地に集まって収録から、プロジェクトで集まって宅録をして作品を出すサークルが増えて、でも、今は固定メンバーが決まったサークルが出来て、そのメンバーでスタ録するというサークルさんが増えて来たかもしれませんね。
 
幸橋:
ぐるっと回って、実際に会って収録する形式に戻ってきた感じでしょうか。
 
杉宮:
結局、会ってますよね。M3で会って打ち上げで気があって、それを機に客演をお願いしてと、そのきっかけにM3がなれれば嬉しいですね。
 
幸橋:
ありがとうございます。少しボイスドラマサークルの変遷に脱線してしまいましたが、スタッフの話に戻ると、RBCさん然りTEPSさん然り、たぶん他にもいらっしゃると思うのですが、サークル参加もしてスタッフとしても活動している方はどうやっているんですか? むしろ、サークル参加・一般参加の人がスタッフ出来るんだと知った時はびっくりでした。
 
杉宮:
出来ます! サークル参加しながらスタッフ出来ます!
 
幸橋:
大事なことだから2回言うってやつですね。
 
杉宮:
当日運営以外でも、前日の現地での設営もありますし、それ以外にM3の参加サークル募集時のチェックとか、カタログの作成とか、上映コーナーの動画チェックとかできることはたくさんあります。動画チェックなんて全部人の目で行っているんですよ。
 
幸橋:
おおうっ! それは確かに人手がいりそうですね。
 
杉宮:
当日サークルで参加していても事前準備だけ参加という方もいますし、当日も半分サークル参加、半分スタッフ参加とか。後は、イベント閉会後の撤収作業ですね。これも人数が多ければ、あっという間に終わるので。
要所要所で協力してもらうという感じです。朝のカタログ販売だけなら出来ます! という方もいます。どれくらいやれるかを確認して仕事を割り振るんで、一部だけお手伝いというのも可能なんですよ。
 
幸橋:
なんと、初耳です。でも、そんな短い時間だけのお手伝いだと逆に邪魔じゃないかなと思うのですが(苦笑)
 
杉宮:
いえいえ、スタッフだってM3のファンなので少しの時間でも交代してくれる人がいれば、買いたい作品を買いに行けますし、お昼休憩のために交代することもできます。
 
幸橋:
確かに。
 
杉宮:
事前の説明会に出られる人でないといけないのですが、時間がちょっとだけでも作れて責任感がある方を募集中です!
もちろんスタッフは無理というサークル参加の方も前日の設営を手伝って頂けるだけでもありがたいです。
実は前日設営には面白い話があって、M3準備では他のサークルさんと関わって仲良くなれるので、前日設営のボランティアサークル同士で前日設営のコンピュレーションアルバムまで作ったところがあるんですよ(笑)*6
 
幸橋:
まさかの前日設営のアルバム(笑)
 
杉宮:
机を並べよーなんて歌詞があったり。面白いですよね。それ以外にもスタッフでコラボして作品を作ることもあります。
そして、より具体的な利点は、前日設営をお手伝い頂けるとそのままご自身のサークルのブース設営も出来て当日の負担が減ります!
 
幸橋:
それ、良いですね!(笑)
いろんな理由でスタッフになられる方はいらっしゃると思いますが、杉宮さんご自身はどうしてM3スタッフを続けているんですか。
 
杉宮:
M3の空気感は好きですよ、平等というか。でも、スタッフを続けているのは代表の人の良さゆえかもしれませんね。
 
幸橋:
一緒にやる人と合うかどうかは大事ですよね。
そういえば、M3のスタッフは全体で何人くらいいらっしゃるんですか?
 
杉宮:
全体で100人くらいでしょうか。でも、即売会ごとにスタッフを編成しているので、正確に数は把握してません。
 
幸橋:
あれ? スタッフ登録をしている訳ではないんですか?
 
杉宮:
違うんですよ。即売会が終わったら、スタッフは一旦解散になって、継続したい人はフォーム登録してくださいという形をとっています。だから、毎回参加出来なくても、2、3回ぶりにスタッフに戻って来るという方もいますよ。1回参加したらがんじがらめに縛られる訳ではありませんので、ご安心を(笑)
 

『好きな演者さん、サークルさん』

 
幸橋:
最近、私、これを楽しみにして、脈絡もなく聞いているのですが、好きな演者さん、サークルさんが知りたいです。
 
杉宮:
この質問が来てしまいましたか(笑)たくさんいらっしゃるのですが、演者だと笑兵衛さんに嫉妬しています。私が得意な役柄を全部網羅していて。
 
幸橋:
笑兵衛さんは凄いですよね。古い作品を聴いてもずっと変わらず上手くて、今上手い人も昔の作品だと発展途上のような移り変わりを感じることがありますが、笑兵衛さん*7はどの作品を聴いても上手くて、私、リアルに笑兵衛さんは本当に実在している人なのか疑っています←
 
杉宮:
実在してますよ(笑)これまた性格が良くて可愛らしい方なんですよ、益々嫉妬してしまいますね。
 
幸橋:
それはお近づきになりたい! では、サークルさんは?
 
杉宮:
わからないかもしれないのですが、ATMさん*8というサークルさんがあって、その作品にずっと出たいと思っていたのですが、客演が実現しないまま、2000年の初めくらいに活動を終了してしまいました。
 
幸橋:
それは残念ですね。そのサークルさんの作品にどうして参加したいと思われたんですか?
 
杉宮:
作られる作品が毎回斬新で、ビジュアルにも凝っていたので、このこだわりの世界観に一度入ってみたかったです。制作に厳しそうなイメージだったので、私の演技を聞いてみて頂きたかったというのもあります。
 
幸橋:
そこまで仰るサークルさんなら、私も作品聴いてみたかったです。
 

『今後の活動』

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幸橋:
では、最後に今後のご予定を伺いたいです。
 
杉宮:
ボイドラ企画が1つとゲームが2~3つ出演予定があります。あと、CMのお仕事が10月にありますね。ただ、どれもまだ情報解禁になっていないので、追々Twitterで(苦笑)
 
幸橋:
TEPSさんは秋のM3には何か新作は?
 
杉宮:
TEPSは今回は残念ながら新作はありません。メンバーも家庭があったりで毎回新作は難しいんです。
でも、先ほど名前が挙がったRBCさんはご家庭もありつつずっと活動を続けられていますが、やめると宣言しなければ続けられる! と仰っていて、なるほどと思ったことがあるんです。解散と言わなければ続けられる!
ということで、第2展示場の「ス-26a」で変わらずTEPSは参加していますので、遊びに来て下さい(笑)
 
幸橋:
ぜひまた伺います(笑)
 
インタビューは以上です。杉宮さん、ありがとうございました!
 
 
『後記』
M3前なので、M3に関わっている方で、M3出品作品にも出てそうな女性演者さん……杉宮さんだ! と選ばせて頂きました。狙い通り(←)M3スタッフについて実は他の人も知らないんじゃないだろうかという情報を諸々掘り起こす事に成功! これまでハードル高く感じていた方も、出来る範囲でならお手伝い出来るかもと感じて頂けたのではないでしょうか。
他にもこの作品のこのキャラが好きで!と私が話し出すとすぐに乗って話し出してくださって楽しい楽しい、これがコミュ力というものか……(ゴクリ…)と思った人見知りインタビュアーだったのでした。
 
***
インタビュアー/幸橋

幸橋 (@kusanotsuki) | Twitter

ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が800件を突破(2017年9月時点)

*1:プ ロデュース団体Velvetさんによる長編ファンタジーシリーズ。皇子として育てられた第一皇女柳姫は王と王妃である両親殺害の罪を着せられた妹を庇って追われる身となる。http://velvet0821.wixsite.com/ryugatari

*2:http://www.studiogiw.com/pro/

*3:昭和63年創設の創作オーディオドラマ(音響劇)、効果音集などを企画、制作する団体さん http://www.rbcnet.jp/

*4:活動を休止した今もなお根強いファンがいる伝説的なボイスドラマサークルさん

*5:演者であり、編集者でもあるKAZUMAさんのボイスドラマサークル。実力のあるキャストスタッフ陣による少年漫画のようなファンタジー世界が魅力 http://www.heavenlyblue.info/

*6:「せつえい!! ~おはよう!また会えたね☆~」 http://emotionarhythm.sakura.ne.jp/tokusetsu/c1/index.html

*7:どんな役もこなしてしまう(いや、本気で!by幸橋)女性演者さん http://kingpanda.sakura.ne.jp/

*8:ATM(あとむのすみか)2000年初期まで活動していたドラマサークル。一話完結の学園シリーズの他、DVDケースCD二枚組作品、シーンに生演奏のオリジナル楽曲を採用など当時では珍しい手法の作品を作り続けた。現在、活動停止