『お遊び企画だったこもれびの森シリーズ』
幸橋:
今まで出て来たアルカナと魔女、パティシエミルクがそれぞれ特定の個人に向けた作品ですが、こもれびの森は誰かに向けたものではないんですか?
ピポ:
誰かに向けたというのとは少し違うかもしれませんが、きっかけは、メーメーJr.を演じてくれた冴島さゆきさん
*1です。彼女はとても雰囲気がふわふわしていてひつじっぽいと言われるんです。だから、私もこもれびの森を作る前から冴島さゆきさんにひつじ役を演じてもらうまでボイスドラマ界を去れないと言っていたんです(笑)
幸橋:
では、冴島さんにひつじを演じてもらうためにこもれびの森を作ったんですか?
ピポ:
そこまで狙っていた訳ではありません。ある時、しばらく描いてなかったイラストを描いた時に描いたのがメーメーJr.で、でも、ひつじが1匹だけだと寂しいだなと思って、他にも10匹くらい描いたんですね。そしたら、予想外に反応があって、音声を付けて下さる方まで現れて、それを聴いたらボイスドラマが聴きたいと思ったんです。他の作品はこの人と作りたいと思って作ったものばかりですが、こもれびの森はこの作品が作りたいと思って作った作品でした。
幸橋:
メーメーJr.も好きですが、こもれびの森は様々なかわいらしいキャラクターがたくさんいて、どのキャラも好きなんですよね(笑)
ピポ:
キャラは少しずつ増えて行って、今は10人以上いますね。クリスマスの話の
カモネギ、違った、老カモのモカとか(笑)
幸橋:
モカ(笑)あれ、絶対狙ってると思ってたんですよ。ネギ背負ったカモに美藤さん
*2をキャスティングして。
ピポ:
美藤さんはイケメンキャラのイメージがあるのですが、せっかくこもれびの森はお遊び企画と謳っているので、遊ぼうと思って。あれはあてがきでしたね。
実は「アルカナと魔女」のアルカナとゼシルシアもあてがきみたいなもので、美藤さんと棄山さん
*3をイメージして書きました。でも、美藤さんはいつも作り手の上を行きますよね。
幸橋:
予想以上にしっくり馴染んでましたね(笑)
ピポ:
他にもこもれびの森はお遊び企画という名目の下、実験的なことはしていて、他の作品は聴き分けが出来るようにメインは4~5人、1シーン2人くらいに抑えているのですが、こもれびの森はその制限を取っ払って1シーンに5人くらいわちゃわちゃ出て来るんです。
幸橋:
それでも聴き分けられますし、そのにぎやかさがこもれびの森だと思います。
ピポ:
こもれびの森は好きなことを好きに作れる作品なので、受け入れてもらえて嬉しいです。
幸橋:
趣味なんですから楽しく作ればそれで良いと思いますよ。それが逆に良い作品になる要素になることもありますから。
ピポ:
そうなんです。6~7年前は企画倒れや音質がびがびでも作りたいから作るという風潮があって、ある意味良い風潮だったと思うんです。でも、今は皆さん収録環境も整っていて、これから始める人はしり込みしているのではないかと感じます。ボイスドラマを作りたいと思いながらなかなか手を出せない人が多いと思うんですが、純粋な「作りたい!」という気持ちを一番の原動力に気軽に作って欲しいと思います。
幸橋:
そうですよ。私が聴き手代表するのもおこがましいですが、こちらとしてはごろごろして聴いているので、作る側もそんなに深く考えなくて良いんですよね。
ピポ:
逆に私は寝っ転がって聴ける作品を作りたいと思うので、そんな風に聴いて欲しいですね。
自分がイラストの作業BGMで聴くものとしてボイスドラマに出会ったので、作業BGMとしても聴いて欲しいです。
『今回もやってきました~好きな演者さん、サークルさん~』
幸橋:
ご想像はされていたと思いますが、ずばり好きな演者さんは?
ピポ:
たくさんいらっしゃるのですが、そうですねえ、一緒に作品を作って感銘を受けたのは
嶝崎ミツキさん*4、
武田恵瑠々さん*5ですね。
幸橋:
どちらもお名前の知られている方ですが、理由は?
ピポ:
まず、
レスポンスが早い。仕事が早いんですよね。早いだけではなくて、
宅録にしてもスタジオ収録にしても事前の
キャラの練り込み具合というんでしょうか、それがすごいんです。作り手とイメージの差はないか、ギャップはないかというのを気にして下さっていて、リテイクを投げる時にも自分のキャラの解釈はこうだったけど、違うかなときちんと相談してもらえるんです。
場数をこなし方がこんなに丁寧に対応して下さるんだと感動しましたね。
あと、作品を大切にして下さる方は企画主として好きになってしまいますよね(笑)自分を大切にして貰えているみたいで。
幸橋:
わかります(笑)
ピポ:
例えば、
こもれびの森のビーピット役のソラリスさん*6がとても良い方で、スタジオ収録の時も収録前にビーピットの声を普段出さないからと熱心に声出しをされていたりとか、クリスマスのお話の時にビーピットの幼少期のキャストさんを募集したのですが、すごく謙虚な枕詞と共に
ソラリスさんの考えるビーピットはこういうキャラだから、こういう方にビーピット演じて欲しいと連絡があったんです。
すごくキャラのことを考えてくださっているんですよね。
正直、携わって下さった方みなさん好きなんですけどね。無条件に応援したくなるくらいに。
幸橋:
わかります、わかります(笑)
ピポ:
あと、
野原沙恵さん*7が大好きです!
演じるスタイルが見える人が好きですね。だから、一緒に作品を作ると好きになってしまうのですが。
野原さんと
鶏子さん*8も好きなんですが、このお2人は
収録時の空気を作ってくれるんですよね。鶏子さんはいつもよーし!やるぞー!という感じで始めてくれて、スタ録は空気を作るのも大事なのでとても有難いなと思っています。
幸橋:
こもれびの森では、その場を明るくしてくれるキャラを演じていらっしゃいますが、実際の現場もそうなんですね(笑)
では、サークルさんはどこが好きですか?
ピポ:
いくつかありますが、まずは
ハーモスフィアさんでしょうか。私は1つのサークルさんの中でも決まった作品をヘビロテで聴くことが多いのですが、ハーモスフィアさんだと、
夜間漂流*9の中のエコーという作品が好きなんです。他の私が好きな作品にも共通するのですが、
おままごとみたいだけれど、最後に現実にまとまるような作品が良いなと思います。
幸橋:
おままごとというのは素敵な表現ですね。一方で虚構という残酷さを感じますが。確かに夢のような世界で終わらないお話ですよね。
ピポ:
似たような理由で、
SpiralSpiritさんの「再生ティルナノーグ」*10も好きなんです。あんまり考え付かない設定ですよね。
ファンタジーをファンタジーらしく作らないサークルさんが好きで、ファンタジーの世界もそこに生きる登場人物からしたら現実なんですよね、そう思える安定感や現実味がないといけないと思うのですが、SpiralSpiritさんや
碧空プラネタリウムさんはそれがうまいと思います。
そして、
Nanaさん*11。企画者の薫篠子さん
*12とは公私ともに仲良くしているのですが、
ここ数年でNanaはこんな感じというカラーが出てきたなと感じます。
幸橋:
確かに。音声の作品なのに何だか視覚化されてきたなと思います。
ピポ:
そうなんです。本人にも言った事があるのですが、フランス映画っぽいところで落ち着いたなと思います。
幸橋:
なるほど。イメージですが、モノトーンな美しさがありますよね。それでいて突然キャンバスに色をぶちまけたような鮮やかさも有り。
ピポ:
そして、選曲と曲のタイミングが素晴らしいと思います。聴いてない方は春に出した「夢のあとに」
*13の最後の曲入りを聴いてほしいのですが、あのED曲の入り方が大好きなんです。
曲で聴かせるボイスドラマはNanaさんだなと思います。
『今後の活動と作品の構想』
幸橋:
pipoworld.さんで気になっているのは、今後も作品を出してくれるのか! ですよね。ぶっちゃけ、その辺りはどうなんですか?
ピポ:
作れるなら四六時中でも作っていたいです! が、社会人になると難しいですよね。ずっと作り続けている人は凄いなと思います。
幸橋:
仰る通りで。
ピポ:
多い時は1年に4作品作ってましたからね。「ちいさなほしときらめくよるに」
*14と「アルカナと魔女」、「 ツイのスミカ ナイナイの城」を同時進行していたり。
幸橋:
初期のころはそんな過密スケジュールで動いてたんですか?
ピポ:
作りたい話はとどめておくと鮮度が落ちるので、台本にするのですが、そうすると作りたくなってしまって。
幸橋:
今は何か作りたい話はないんですか?
ピポ:
実は、こもれびの森で3作品ほどプロットがあるんです。新作でも2作品くらいネタがあって。
幸橋:
こもれびの森の次回作の構想があるんですか!? それは聞き捨てならないですね!(ガタッ)
ピポ
シーカメインの話や孫メイン、大人組メインの話があるんですよ。
幸橋:
その話は作らないんですか?
ピポ:
スタッフさんがいいよと言ったらでしょうか(苦笑)お待たせし過ぎてこもれびの森は自分の一存で作れるものではなくなってきましたから。
幸橋:
ひたすら聴きたいと言い続けます(真顔)
ピポ:
ありがとうございます(笑)
こもれびの森は気軽に聴いてもらいたいので、既に作っている湖のおはなしはCDとして出しましたが、Webでまったり聴いてもらえるようにしたいですね。
幸橋:
あと、パティシエミルクとおんがくのくにはアルカナと魔女と同じ世界でしたよね。この世界も、今後、作品展開されていく予定はあるんですか?
ピポ:
守魔女が出て来る話は構想がいくつかあります。
ファンタジー作品を作る時は、その作品の世界は現代日本と違うので、通貨はどうとか物流はこうなっているとか、他にはこういう国があってこういう関係性だという風に設定を書き出します。アルカナと魔女を作った時には、続編は意識していませんでしたが、アルカナと魔女にはアルカナとゼ
シルシアの国しか出て来ないものの、
他にも国があって、その数だけ森と守魔女がいた方が自然だなとは思っていました。
幸橋:
その中にパティシエみるくとおんがくのくにの国もあったと。
ピポ:
そうですね。おんがくのくにも他の国もあって、タイミングが合えば作ろうかなとは思っていたのですが、おんがくのくにはみなづきさんと仲良くさせてもらっている今作らないとと思って(笑)
幸橋:
それらが聴けるのはいつになるんでしょうか(笑)
ピポ:
いつなんでしょう(笑)イベントには今後もあまり出ないとは思います。かと言って、CD作品の新作を作っても、M3に持って行かないと手に取って貰えないと思うので、いつの日かの春M合わせで。
息をしているかいないのかわからないサークルですが、マイペースにやっていきたいと思います。
幸橋:
pipoworld.さんの作品が聴けるならいつまでも待っています(笑)
インタビューは以上です。ピポさん、ありがとうございました!
『後記』
今回はM3前ということもあり、M3前に修羅場期間に入っているサークルさんにお声がけするのは相手の方が大変だろうなあ、たぶんM3に作品を出さなくて、でも、今年何らかの活動をしていたサークルさんは……
ということで選ばせて頂きました。
また、活動頻度も自分のペースで続けていらっしゃる印象がありました。他のサークルさんもマイペースに長く続いてくれるように、その一例としてご紹介出来ればと思いました。
もちろん、元々大好きなサークルさんなので、あの世界観がどう生まれるのかも気になっていました。それが聞けて私は大満足です(笑)
最後に、こもれびの森のシリーズの続きが聴きたい!!!←
***
インタビュアー/幸橋