ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」第10回は今年、活動開始10周年の「E*Project」*1の汐瀬悠里さんです!
10年間の活動を振り返りつつ、その活動期間の初期から制作を開始して、去年ようやく完成した長編作品「Mid-nighter_nocturnus」*2の裏話も伺いました。
【本日のゲスト】
汐瀬悠里さん
企画者、演者
2004年よりボイスコとして活動を開始。2007年からはボイスドラマサークル「E*Project」を開始、Web公開ドラマ、ドラマCDにて20を超える作品を制作。 演者や編集スタッフとして、他サークルの多くの企画に参加している。
出演可能な役:少年、青年、若い女性、中年の女性※依頼可
URL:
・ボイスサイト「Pioneer of Eden」
http://shioseyuuri.kakurezato.com/
・企画総合サイト「E*Project」
http://epro.ehoh.net/
幸橋:
本日のゲストは今年、主宰しているサークル「E*Project」が10周年を向かえた汐瀬悠里さんです。
何度かお会いしているので、今回は緊張せずにしゃべれそうです(上手く話せるとは言ってない)よろしくお願いします!
汐瀬悠里さん(以下、汐瀬):
声かけてくださるのを待ってました(笑)よろしくお願いします。
『ほとんど活動出来なかった3年間』
幸橋:
最初の出だしが固定化してきましたが、まずは活動を始めたきっかけから。2004年からということで、実はこれまでのゲストさんの中でも活動歴が長いんですよね。最初はボイスコさんとしての活動からですよね?
汐瀬:
はい。高校生で活動を始めました。中学・高校と演劇部に入っていたのですが、中学時代の演劇部は全国大会にまで出場経験のある強豪校で舞台に上がるのは競争率が高く、逆に高校の演劇部は部員がほとんどいなくて舞台自体が出来なかったんです。下級生が入部してからも、下級生には実力のある人が多くて、演じたくても演じられないことが多く、他に演じられる場所がないかと探していました。
幸橋:
それで、どうやってボイスドラマを知ったんですか?
汐瀬:
元々イラストを描いていて、同じようにイラストを描いている知り合いがサイトを持っていたんです。そのサイトにとある絵の上手い絵師さんのサイトへのリンクがあって、その人はゲームを作っていたんですが、そこで
すけぼ*3のバナーを見つけて、こういう演じてネットで声を提供する活動があると知りました。
幸橋:
最初はどういう作品に出演していたんですか?
汐瀬:
短編やイメージボイスに参加していたのですが、実は、始めた頃がちょうど受験生で、あまり活動は出来なかったんです。だから、2004年から始めたものの、最初の3年間はあまり活動出来ませんでしたね。本格的に活動を始めたのは大学に入ってからです。
幸橋:
知ったのは高校生だけど、活動は大学生からというのは、私も同じです。私の場合は高校時代にはボイスドラマに興味を持てなかっただけですが(笑)
最初はあまり活動できなかったということですが、汐瀬さんが活動始めた頃はどなたがいらっしゃったんですか。
汐瀬:
高野ぱぐさん*4や
梶原士玖真さん*5はその頃既にいらっしゃいましたね。もう少し後に
櫻井さん*6の名前を見かけるようになりました。
今はあまり見かけないのですが、
竹井ゆずさん*7、
ムラカミハジメさん
*8という方がいて、男性が限られていたので、男性役ではムラカミさんの名前をよく見ましたね。
幸橋:
へえ、いつ頃からいらっしゃるんだろうと思う方々だったので、その頃には活動されていたんだとわかるのは面白いですね。
そして、汐瀬さんは2004年から始めたものの、本格的に活動を始めたのが3年後ということですが、となると2007年ですか。サークル「E*Project」を始めた頃ですね。
汐瀬:
そうですね。企画参加している内にやってみたくなって。
幸橋:
演劇部という事でしたが、その頃から脚本は書いていたんですか?
汐瀬:
演劇部時代に脚本は少し書きましたが、上演することはありませんでした。受験勉強の時にネタを書き溜め始め、脚本を書くようになったのはボイスドラマ企画をするようになってからです。
幸橋:
最初に作ったのは、サイトにもある「
Trick or Treat!」
*9 ですか?
因みにE*Projectさんは作品数が多いのに、古い作品もちゃんと聴けて、サイトも崩れてなくて、放置されてない感じが素晴らしいなと思っています。
汐瀬:
ありがとうございます。でも、実は
「Trick or Treat!」は2作品目で1作目が別にあったのですが、さげてしまったんです。
幸橋:
そうなんですね。どういうお話だったんですか?
汐瀬:
4人の兄弟でくだらないことで喧嘩して、最後にはおいしいところをお母さんがとっていくというお話なんですが、 これは高校時代の先輩が書いた舞台の台本をボイスドラマにした作品だったんです。なので、
自身で台本を書いた最初の作品は、「Trick or Treat!」です。
幸橋:
E*Projectさんの作品は短めの作品が多いですよね。でも、その中で、キャラの変化があるというか、落ちこぼれが何かを成し遂げる、自分の世界に閉じこもっていたキャラが外の世界に出ていく、そういう前向きな話が多い気がしています。
汐瀬:
そうなんでしょうか。好き勝手書いているのでわかりませんが、ハッピーエンドは多いですね。最後、絶対もやっとしないように、わかりやすさ重視で書いています。音だけの情報しかないので、余分なものは極力削って、削り過ぎてしまう時もありますが(苦笑)でも、活動してきて、聴きやすい作品やわかりやすい作品はやはり好印象を覚えるので。
『サークル開始10周年を迎えて』
幸橋:
10周年という区切りの年でしたが、10年間やってみて率直にいかがでしたか。
汐瀬:
しんどい時もありましたけど、やっぱり楽しかったですね。
幸橋:
10周年記念だったのか、今年は近年に比べて発表した作品が多かったですね。秋のM3で新作を出して、M3直後の
コミティアでまた新作を出して、何考えているんだろう……とは思いましたが、その自ら修羅場を作っていく感じがE*Projectさんらしい気もしたり(笑)
汐瀬:
ナゴリユキ*10ですね(笑)この話は3年前からあったネタですが、その時は他にやりたい話があって、今じゃないなと思って作らなかったのですが、今回、形に出来ました。
10周年企画としては、Web公開の中編作品をやりたいと思っていたのですが、自分のキャパシティを考えるとCD作品を複数制作して、中編作品を作るのは無理だと思って、見送りました。
幸橋:
ちゃんとキャパシティ考えて調整出来るのは素晴らしいですね。
汐瀬:
一時期、編集でいっぱいいっぱいで、周りから心配されていたので、それから無理をしない、心配させないと決めています(笑)
幸橋:
良い事です(笑)
汐瀬:
今年の秋のM3で出した
「Angel kiss」*11も本当は同じ世界の物語である「Festival」
*12を出した時に一緒に出したかったけれど、キャパシティを考えて断念した作品ですね。
Festivalの最後と少しだけ繋がるので、同時に頒布出来れば良かったのですが。
幸橋:
E*Projectさんは発表する作品はいつもCDというイメージがありますが、Web公開作品にしようとは思わないんですか? CDだとWeb公開より大変な気がするのですが。
汐瀬:
CDという現物が好きなんです。形として残したくて。あと、地味にジャケットを差していくパッケージ作業が楽しいんですよね。
幸橋:
そうなんですか(笑)私もCD作品作ったことがありますが、ジャケット入れる作業とCD焼く作業が大変で、もう作らない……と思った口なので、楽しめるのは凄いですね。
汐瀬:
パッケージが大変と思う人もいると思いますよ。人それぞれではないでしょうか。
幸橋:
あと、汐瀬さんと言えば、自分の企画をしながら、別企画へ編集スタッフとして参加しているというイメージがあります。どうやったら企画と複数作品の編集なんてことができるのかと不思議でした。
汐瀬:
今はそうでもないですよ。2~3年前のM3前はすごかったですけどね。2014年がピークで自分の企画も含めて5~6つくらい編集していました。
幸橋:
……何と言うか、凄いですね、という言葉しか出てこないです。
汐瀬:
例えば、秋のM3合わせだと、自分の企画のボイスは早めに集めて8月くらいに編集して、9月に依頼があった企画のボイスがそろってくるので、そこから編集を始めて、10月でガーッと仕上げるという感じです。
幸橋:
そのガーッと、という一言にどれくらいの苦労が詰め込まれていたのかと考えてしまいますね。
汐瀬:
他の企画で編集することで、私も色々勉強させて頂きました。
幸橋:
コラボ作品もよくされていませんか?
汐瀬:
どうでしょう? AKITOLETさん
*13以外ではあんまりがっつりコラボはしてないかもしれません。
幸橋:
今年の秋M3でもAKITOLETさんと「Chess Game」
*14でコラボしてましたよね。どんな風にコラボを作品作ろうという話になるんですか。
汐瀬:
コラボしたいねという話は普段
からしているのですが、
自分から声をかけることが多いですね。「Rewind~巻き戻った世界」
*15の時は某夢の国で列に並んでいる時にやりましょう! と(笑)
AKITOLETさんとのコラボはもう作業分担が出来ていて、私は脚本・編集、雑務を担当して、 亜樹さん*16は音楽系やデザインを担当しています。最初にこういう話で! と方針を出してからはそれぞれの作業を各々進めて、後で合わせるという形で作っています。
幸橋:
そんな風に自企画や他作品への参加やコラボ作品など次々作っていけるのは何でなんでしょう?
汐瀬:
仕事で嫌なことがあっても、作品を作っている事でストレス発散になるんです。
幸橋:
まさかのストレス解消法(笑)でも、作品作ることがしんどい時はありませんか。
汐瀬:
書く段階はしんどいですが、完成した時や公開出来た時が楽しいですね。あと、編集も楽しいです。やっている時は苦しいけど、終わったらまたやりたくなります。
幸橋:
それはもう中毒では……(笑)
汐瀬:
そうかもしれません(笑)
『転機・ターニングポイントとなった作品たち』
幸橋:
E*Projectさんは作品数が多いですが、その中でもこの作品は活動の中でもターニングポイントだったという作品はありますか?
汐瀬:
2つあって、1つ目は先ほど名前が出ていた
「Trick or Treat!」、もう1つは
「花を咲かす少年」*17です。
幸橋:
「
Trick or Treat!」を選んだ理由は、初脚本作品だからですか?
汐瀬:
そうですね。「
Trick or Treat!」 は企画者として歩き始めた作品ですから。実はこの作品は、ある別サークルさんの企画がきっかけで作ったんです。2005、2006年くらいにお菓子をテーマにした企画があって、絵柄が可愛くて、いかにも応募したくなる企画でした。実際の応募数も確か3桁を超えていましたね。その作品に
採用されなくて、それがあまりにも悔しくて作ったのがこの「Trick or Treat!」です。
幸橋:
今ではよく秋のM3がハロウィンの時期なので、ハロウィン作品をよく見かけますが、なぜハロウィンに?
汐瀬:
お菓子をテーマにするならハロウィンかなと思いまして。でも、その頃はまだハロウィンって今ほど知られてなかったので、ハロウィンモチーフの作品は少なかったですね。だからかはわかりませんが、応募数も多くて85くらいあって、未だに自企画の募集でこの数字が破られたことはありません。
この企画で仲良くなった人もいて、大宮水那瀬さん
*18、ひげ太郎さん
*19とはこの企画で知り合いました。
幸橋:
スタッフ欄に書いてありますが、この作品は編集は別の方がしていたんですね。最初からがつがつ編集していたのかと思っていたので、意外です。
汐瀬:
そうなんです。
自分でやり始めたのは5作品の「ようこそ、僕らのお茶会へ!」*20とかこの「Trick or Treat!」の番外編からですね。
幸橋:
なるほど。そう言えば、制作のきっかけになった作品はなんという作品だったんですか?
汐瀬:
残念ながら、途中で頓挫してしまったようで、完成しなかったんです。
幸橋:
なんと。頓挫と言えば、E*Projectは作品数は多いですが、企画倒れしたものは無いんじゃないですか? 「Mid-nighter_nocturnus」は心配しましたが、これはまた後ほどお話を聞きますので、その時に。
汐瀬:
企画倒れしたことがないのが自慢です!
幸橋:
素晴らしい! そして、2つ目が「花を咲かす少年」ですね。この作品を選んだ理由は何ですか?
汐瀬:
これは
2012年に5周年記念として制作したんです。CD作品は2010年の秋に「Athena~夢追い達が集う街~」
*21を作っていたのですが、そこから期間が空いて作った作品です。
幸橋:
期間が空いた理由はあるんですか?
汐瀬:
ちょうど社会人になった頃で社会人1年目は作品を作るのはやめようと思って自制していたんです。仕事が忙しくて手が回らず、企画に参加してくださった人に迷惑をかけるのは嫌だなと思って。でも、「花を咲かす少年」を機に社会人になってもやるぞーと再出発になった作品ですね。
幸橋:
社会人になる頃に分かれますよね。そこからいなくなっていく方、ご自分なりのペースを見つけて続ける方。汐瀬さんは後者だったんですね。
でも、しばらく作ってないと作るのに躊躇してしまいませんか?
汐瀬:
実は「花を咲かす少年」を出す前に2011年の秋で
「Trick or Treat!」の続編をリハビリとしてCD化して出しているんです。そこで、
手ごたえがあったので、「花を咲かす少年」を出しました。
幸橋:
5周年記念ということですが、他の作品とは何か違うんですか?
汐瀬:
この作品はとある少年が花屋を開いて、育てた花で町の人々を幸せにしていく、ある意味サクセスストーリーなんですが、E*Projectが歩んだ軌跡を描いているんです。
幸橋:
花屋とボイスドラマサークルが同じなんですか?
汐瀬:
主人公の少年は花が好きで花屋を始めるのですが、花を育てるために種や苗を手に入れて、土地を見つけてという工程が、私で言えば、ボイスドラマが好きで企画を始めるために、サイトを作って、絵師さんやボイスコさんを集めるという工程にあてはまるんです。
そして、花屋が軌道に乗ってきた時に、あるトラブルが発生するんですが、これも私の作品を聴いてくれる人が増えて楽しいと思っていたのに、突然のトラブルがあって、それを表現しています。
幸橋:
E*Projectさんでトラブルってあまり耳にしませんでしたが、あったんですね。
汐瀬:
Athenaを作った時にキャストさんと少しトラブルがあって、もう作品を作るのをやめようと思っていた時がありました。
幸橋:
トラブルって少なからず皆さんお持ちだと思いますが、そこからどう復活したのかは気になるところですね。
汐瀬:
E*Projectは人間関係でトラブルが起こったことがこれまであまりなかったので、精神的にこたえましたが、周りから気にするなよと励ましの言葉を貰って、またやり始めようと前向きになることが出来ました。
花を咲かす少年の作中でナレーターが少年は笑顔のために花を咲かせますと言っているのですが、私も誰かが私の作品楽しんでくれたら幸せだなと思います。花を咲かす少年はそういう感謝の意味を込めた作品でしたね。
幸橋:
花を咲かす少年は社会人になった後の作品という事でしたが、社会人になっても作品を継続的に作り続けるコツってあるんですか?
汐瀬:
仕事によるとは思います。私は土日は完全お休みなので、休みに作業が出来ます。環境と、あとは、やっぱり本人のやる気次第では無いでしょうか。
幸橋:
耳が痛い!
汐瀬:
でも、私も5年、10年とやるとは思ってなかったですよ(笑)
私が企画を始めた頃、NOMARKさん*22が10作品くらい作っていて、私もそれくらい作れたら良いなと思ってたら、気づくと今では20作品くらい作っていました。ボイスドラマとして形に残したいという思いと自分が楽しみたいという思いでやって来ました。そして、他の作品を聴くと作りたくなってしまうんですよね。
幸橋:
私は聴くだけが良いです!←
汐瀬:
作り手の性なのかもしれませんね(笑)
後半に続きます!