ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」

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第5回『榊 孝祐さん』 ~後半~【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】

第5回「榊孝祐さん」のインタビューの後半です。

前半がまだの方はこちらから先にどうぞ!

http://voidratohito.hatenablog.jp/entry/5

<目次>

 

『印象に残っている作品』

 
幸橋:
これまで演じて来られた作品の中でこれはという作品はありますか?
 
榊:
人間カプリチオさん*1「先生、ごめんね。」*2でしょうか。
 
幸橋:
マジですか!!(ガタッ) 私もあの時の榊さんの演技めちゃくちゃ好きなんです! 爽やかな色気というか!
 
榊:
爽やかな色気(笑)
 
幸橋:
すみません、取り乱しました……私の事はさておき、榊さんはどうして「先生、ごめんね。」が印象に残っているんですか?
 
榊:
周りからの反応が良かったというのもありますし、それまで演じてきたキャラと毛色が違ったんですよね。演じた国見は知的なんですが、弱さも持ってて、心配しないでというけど、子どもで見栄っ張りな高校生です。最初は彼の気持ちがよくわからなくて。自分の気持ちを悟られないようにしているんですが、さっさと告白してしまえよ! と思っていましたね。でも、考えた分、今では共感できるところはたくさんあります。
 
幸橋:
お話を聞いている感じだとキャラの気持ちや考えはかなり考える方ですか?
 
榊:
考えますね。どういった考えを持っているかとか生い立ちとか。録るまでは結構考えます。
台本の情報から幼少期はこういう性格で、過去にはこんなことがあってとこれまでの経歴を想像して自分で勝手に決めてしまいます。
 
幸橋:
凄い想像力ですね。
 
榊:
でも、その分、録る時は何も考えないようにしています。その時に思ったことを出していますね。あくまで自然な会話劇を聞いて欲しいと思っていて、作り込んだ感じは出さないことを重視しています。 セリフを聴いて違和感があるのが嫌なんです。
 
幸橋:
へえ。他には自然に話すために気を付けていることはあるんですか?
 
榊:
収録の時は相手の台詞を反響させています。
スタジオ収録などで相手がいるときは会話が出来ますが、自宅収録ではただ自分のセリフをしゃべっていると会話が成立していないんですよね。
だから、例えば、相手が「朝ごはんを食べましょう」というセリフをどこの位置からどう言ってるかなとイメージして、それを受けてしゃべっています。
サイトで相手役のサンプルボイスが聴けると想像しやすくて嬉しいですね。
 

『復帰後の変化』

 
幸橋:
しばらく休止されていて今年復帰されたとお聞きしましたが?
 
榊:
はい、2016年6月から休止して、2017年の春のM3作品で再開しました。
 
幸橋:
その理由をお聞きしても?
 
榊:
まあ、引っ越しなど環境の変化もあったのですが、ボイスコ活動は趣味だと思っているので、やりたい時にやってやりたくない時はやらないで良いと思っています。またしばらくやめて、ふと再開するかもしれませんし、そこまで特別に考えてません。
 
幸橋:
私もその派で、趣味なんだから好きなときにマイペースにやれば良いと思っているのですが、わざわざ休止と宣言されていたので。
 
榊:
それで言うと、当分収録が出来ないなと思ったので、企画にご迷惑をおかけしないために休止と言っていましたね。
 
幸橋:
なるほど。また再開したのは環境が落ち着いたからですか?
 
榊:
しばらく演技をしていなかったので、少しやってみたいなと思って再開しました。復帰作品でまたiDearoomさんに受かって、運命を感じましたね、流石に主役では無かったですが(笑)
 
幸橋:
そうなんですよ! 復帰した後の作品がiDearoomさんの「ガーネット・ミニスケープ」*3とdestinyさん*4の「Empty Metropolis」*5ですよね。どちらも休止前と差があって連続してびっくりしたんです。
 
榊:
そうですか?
 
幸橋:
そうですよ! 榊さんと言えば、キレイな感じの少年・青年というイメージだったのに、ガーネット・ミニスケープでは狂った感じのひゃっはーな男性エキストラでしたし、Empty Metropolisの船長エヴァはイラストだけならこれまで通りきれいめの青年ですが、いざ聞くと低い声で豪快な話し方をしますし。休止の間に何があった!? と思いましたよ。
 
榊:
ああ、なるほど(笑)でも、自分としては、特に変化があった訳では無いんですよ。
エヴァは確かにイラストではかっこいい青年ですが、周りのメンバーがみんな若くて、まとめ役だとドスがきいていなくてはいけないと思って、あれくらいの低い声にしました。
彼は歴戦の勇士でこれまであくどいこともやっています。だから、軽い感じではないだろうと思って演じたら受かりました。
ガーネット・ミニスケープもどのキャラもどこかしら狂っているという設定で、かつ、彼もドキュンと言われているので盛大に狂ってないとダメだと思って演じました。
 
幸橋:
では、榊さん自身に何か変化があったというよりも、キャラに合わせた結果という事ですか?
 
榊:
そうです。ただ、destinyさんもiDearoomさんも前に企画に参加したことがあったので、勝手を知っているというかアドリブはだいぶ入れましたね。
 
幸橋:
例えば、どんな感じなんですか。ネタバレにならない程度に。
 
榊:
そうですねえ、ガーネット・ミニスケープでは最後に畳みかけてオカマっぽく言うところがあるんですが、それは全部アドリブです。
Empty Metropolisもちょくちょくアドリブを入れているのですが、最後のギャグっぽいセリフはアドリブでした。かっこいいエヴァとギャグっぽいエヴァを入れたかったんです。
(この後、具体的に教えて貰う)
 
幸橋:
それ、大筋は変えてないですが、だいぶキャラの印象が変わるアドリブですね。
 
榊:
さっきも似たようなことは言ったのですが、収録時は深く考えずにセリフに無くてもその場で思ったらやります。それを有難くも採用して頂けました。
 

『エキストラにある自由を楽しむ』

 
幸橋:
榊さんってエキストラをかなり楽しんでますよね。
 
榊:
楽しいですよ。メインだとセリフに乗っかる必要がありますが、エキストラやガヤは制約が無くて思ったままにやれるので好きです。
 
幸橋:
そうなんですね。エキストラやガヤを依頼する時などは、丸投げすると演者さん困るんじゃないか、言うこと決めておいた方が良いかなと思ってしまうのですが。
 
榊:
人によるとは思います。でも、僕の場合は、どんなアホな事を言ってやろうかと考えるのが楽しいですよ。
さっき言っていた「あまつきつね」と「あまつひかり」で出したひまわりの種屋も客にからんでいるver.と奥さんに逃げられて愚痴をこぼしているver.があって、エキストラやガヤだとそういう自由があります。
自分なりの解釈をつけるのも楽しくて、キャラが発狂する作品でガヤに指定がなかったので、狂った駅員をやってみたりとか(実演有り)
最近はエキストラをやる機会も多いので楽しいです。
 
幸橋:
第5回にして、この企画なんで音声じゃないんだろうと思ってしまいました(笑)これを誰かに聞かせたい。
 
榊:
楽しみとは違いますが、メインとエキストラを両方演じる場合は声を被らせないようにしています。あとは、エキストラで何役も演じる場合も声が同じにならないように、声の高さや役の年齢を変えています。
 
幸橋:
榊さんって予想以上に色んな声が出せるんですね。演じられるキャラに老人もあると聞いていたものの、実は半信半疑だったんです。
 
榊:
役柄は幅広く出来るけど、個性がある声ではないと思っています。
それなりにできるけど、特筆すべき点はないというか。なので、以前から男性の声で出来るものは全部アピールしてエキストラに拾ってもらおうとしていたんですよね。そこそこできれば、エキストラをやらせてみようかと思って貰えますし。
今活躍されている方は自分なりの武器を持っていて凄いですよね。
 
幸橋:
確かに個性的な声ではないかもしれませんが、なんだか気になってしまう声ではあると思います。
実は榊さんが気になった最初の作品は「Memoria 忘却の語部」*6のキウルなんですよね。彼は誠実な普通の青年なので、別に特殊ではなかったのですが、なんでか耳に残ってしまいました。
 
榊:
そうなんですね。いずれも大切に演じていますが、その作品だけ何かしたという訳では無いかもしれません。
 
幸橋:
まあ、私の感覚ですから(笑)
ちなみに得意な声質はあるんですか?
 
榊:
昔は地声が高かったので、年齢が近かったこともあり、少年が演じやすかったと思います。でも、最近は特別これというものはありません。
 

『おすすめのサークルさん・演者さん』

 
幸橋:
これは個人的な興味なのですが、おすすめのサークルさんや演者さんがいれば教えて欲しいです。
 
榊:
先ほどから名前が挙がるiDearoomさんおにぎりワゴンさん*7 でしょうか。
 
幸橋:
私もおすすめですが、やっぱりおすすめサークルさんって被りますよね。
 
榊:
あとはNERVEさん*8
 
幸橋:
わかります! 幻影綺譚とかめっちゃ好きです*9
 
榊:
イラスト担当の亜積譲さん*10がやっていて作り込み方が違いますよね。やっぱりボイスドラマの花はなんだかんだイラストで、そのイラストにどう声を乗せていくかだと思うので。
 
幸橋:
では、演者さんでおすすめの方はいらっしゃいますか?
 
榊:
男女お1人ずついて、男性は美藤秀吉さん*11ですね。
 
幸橋:
ほう! おすすめとして挙げるには異論はありませんが、理由は何ですか?
 
榊:
あの人の声は絶対唯一だと思うんですよね。特徴的なのにどの役をやってもすんなり入る、その辺りのセンスでしょうか。
 
幸橋:
ふむふむ。
 
榊:
あとは、ギャグセンスが。
 
幸橋:
……ギャグ、ですか?
 
榊:
そうなんです。アドリブ力が凄いんですよね。少し古い作品で、別名義だった時ですが、ビストロ*12に出て来る豚が憎たらしいくらい上手いんです。
 
幸橋:
そういえば、確かにあの声を豚役にしてしまうという暴挙というかナイスチャレンジというか大物企画がありましたね(褒めている)
 
榊:
真面目な役はそれっぽくやれば出来ますが、笑いやギャグはセンスですよ。そこは尊敬しています。エキストラでアドリブをしているのもそのセンスを磨くためでもあるんです。
 
幸橋:
まさか美藤さんをつかまえて、彼のギャグセンスを熱弁される日が来ようとは思いませんでした(笑)仰られたいことはめちゃくちゃよくわかりますけどね!
それで、女性は?
 
榊:
音枝優日さん*13ですね。
 
幸橋:
ユキトさん*14もおすすめで挙げていらっしゃいましたが、音枝さん、人気ですね。
 
榊:
個人的には超ロジカルな方だと思っています。無数の数式が並んでいるすっごい計算式を含めた理論的なものが頭の中にあって芝居をしているようなイメージです。この台詞をどう思って言ったのか訊いたら何行でも書けるくらいに考察をしていると思うくらい。作り込み方を見習いたいです。
 
宅録の面白さ』
 
幸橋:
榊さんは相手のことをイメージして演じているそうですが、宅録だと想像するのは大変ではないですか?
 
大変ですが、それがある意味楽しみではありますね。完成品を聴いて他のキャストさんが出したものがイメージ通りだったり違ったりするのが面白いです。目隠しでパズルをやって、後からこうだったんだとわかるような楽しさがあります。
それは宅録ならではの楽しみではないでしょうか。
勿論、難しくもあります。一番ギャグが難しいと思います。間、テンポ、ツッコミ、ボケのタイミングが難しいです。宅録でギャグが出来る人が上手い人だと思います。それがさっき名前を挙げた美藤さんですね。
 
幸橋:
確かに笑いを生む独特の間は宅録だと難しいですね。
 
榊:
スタジオは有りだと思いますが、宅録でギャグ作品はあまりないと思うんです。難しいですから。
一方で、挑戦する作品が増えると良いなと思います。
編集さんが大変ですけどね(苦笑)それを上手くまとめたのがビストロだったと思います。だから、十何年経っても支持されています。
 
幸橋:
未だに好きな作品でビストロ挙げる方いらっしゃいますもんね。
榊さんもやはり好きな作品はビストロですか?
 
榊:
そうですね。
あとは出演作品ですが、「あまつきつね」、「あまつひかり」も好きです。
上手い方ばかり集まっていて、上手い人がかみ合うと掛け合いが良くなるということがわかる典型のような作品でした。
それほど重くなくて聴きやすいですし。
 
幸橋:
「あまつひかり」が意外な方向から押しつぶしにかかってきましたけどね!
 
榊:
確かに(笑)
 

『今後の予定』

 
幸橋:
では、最後に今後のご予定は?
 
榊:
秋M3に出る作品が2作あります。
1つは「我楽多ロマネスク」*15
もう1つはエキストラで拾って貰いました。
 
幸橋:
他に予定が無くても、こういうことをやりたいと思うものはありますか?
 
榊:
今のところは特にはありません。マイペースにやっていこうと思います。
自分のペースは人それぞれあって、自分のペースで出来るのがボイスコの良いところですから。
 
幸橋:
ご自分のペースで今後も長く活動して下されば、私も嬉しいです。
 
以上です。榊さん、ありがとうございました!
 
『後記』
榊さんをわかってもらえなかったから選んだというのは半分冗談だとして(半分は本気だったのか)
男性演者さんに話を訊きたいと思い、悩んだ結果、もしかしたらあまり名前を知られていないかもしれない榊さんにお願いしました。
理由は休止からの復帰直後だったためです。生活環境次第では活動を停止することも多いボイスコという趣味の中で休止、復帰をどう考えていらっしゃるのかなと思い、選びました。あと、好きな演者さんでもありますしね! 好きなのにわかってもらえなかったですからね!←
予想外にいろいろ演技に対してやボイスコという活動に対しての考え方も教えて頂いて楽しかったです。
 
***
インタビュアー/幸橋

幸橋 (@kusanotsuki) | Twitter

ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が800件を突破(2017年9月時点)

*1:ウスイハクさんのボイスドラマサークル。惜しまれつつ休止。しかし、再開するらしいという風の噂に幸橋はドキドキを隠せない https://twitter.com/humancapriccio

*2:ボイスドラマサークル人間カプリチオさんの作品。文化祭直前、美術部の部長国見は思いを寄せる顧問の吉井に自身の描く人物画のモデルになってくれるように頼む

*3:濃厚なスモッグに満たされ、健康被害に怯える世界。1通の手紙に書かれた好条件の治験アルバイトを求めて三鷺は書かれていた場所へと向かう。それが惨殺ゲームの始まりとは知らずに…… http://garnet-miniscape.idearoom.jp/

*4:ボイスドラマ活動中心の木下結璃さんと女性ボーカルの桜井みおさんのサークル http://stargazer.flop.jp/pl/destiny/

*5:青い海で死のセレナーデが聴こえ、罪人の船を飲み込むと恐れられている幽霊船クラーウィス号。人身売買で売られた少女はそんな伝説として恐れられた彼らに出会う http://stargazer.flop.jp/pl/metropolis/

*6:赤荻柊一郎さん企画のボイスドラマ作品。人里離れた場所に住む女性を訪ねた男は物語を語る人形を見つける

*7:第2回ゲストのみや。さん企画のボイスドラマサークル http://onigiriwagon.sakura.ne.jp/

*8:かわくじらさん、桐枝侑璃、亜積譲さんのボイスドラマサークル http://nwstudio.org/

*9:骨董堂を継いだ狗郎と居候の民族学者の神威、そして、彼らを取り巻く妖怪たちのお話 http://nwstudio.org/kitan/

*10:NERVEメンバー。様々な企画にイラストを提供している 

http://plug.foldblack.com/

*11:一声で判別出来てしまう声の持ち主の男性演者さん(by幸橋 だけど皆さん異論はないはず←) https://twitter.com/kidoukidou1

*12:料理人をしていた少年ビスは店を首になり、就職先を求めて首都へと旅に出た。その途中でしゃべる豚で自称偉大な魔法使いサムに出会う

*13:女性演者さん。スピリチュアルタロットカウンセラーもしている多才さ。意志の強さが声に現れた女性役が好き、と幸橋が言っていた← http://arucanagarden.web.fc2.com/

*14:第3回ゲスト。癒しボイスが素敵な女性演者さん 

http://nekonotte.tumblr.com/

*15:小沢雪霧さん企画ボイスドラマ作品 http://snowxmist.web.fc2.com/junk/