第21回『渡辺 流久里さん』 ～後半～【ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」】
ボイスドラマ活動者インタビュー企画「ボイドラと人」の第21回「渡辺 流久里」さんインタビューの後半です！
＜目次＞
『「ダイブする」＝「自動書記化する」』
幸橋：
流久里さんは、よく脚本を書く時はダイブするという表現を使いますよね。考えて書いているのではなく、見えている物語を記録しているだけという理解なのですが、どの作品がそのダイブした作品なんですか。
渡辺：
今回はダイブだけというのはないけれど、長編のクライマックスはだいたい自動書記化しているかな。自分で計算したセリフはどうしても浮いてしまう。神々のヴァーミリオンはほぼ考えてないと思う。
幸橋：
渡辺：
ヴァーミリオンも気が狂っていた作品だったね。書いていく内にどんどん長くなって、1話が40分とかになって終わらない(笑)参加したみんなが盛り上がっていたから、その熱量でやっていた気がする。
幸橋：
そんな量を考えずに書けるものですか。
渡辺：
いつまでも出さなければならない情報が出なかったら、たぶん設定が破綻しているんだろうけど、それがなかったから、キャラが話すのにまかせっきりにしていたね。だから、どんどん長くなってしまう。短編苦手だから短編上手い人はすごいなと思う。もっと書かせてと思ってしまう。
『RBプロジェクトと創造旅団カルミア』
幸橋：
ここで言って良いのかわからないんですが、私も参加させてもらったカルミアは思い入れが強いんですが、最近までずっと口を閉ざしてきました。言葉に出来なかったんですよね。
渡辺：
他にもきつい時はあったけど、カルミアもきつかったね。気が狂っていた極みの時期だったと思う。関係者は全員言葉に出せなかっただろうし、出せない人は今も出せないよね。
幸橋：
私はお陰様でやっと自分の中で整理が出来て、最近言葉に出来るようになりましたが、モノクローム・パレード時のRBプロジェクトもカルミアも価値観のぶつかりというのか……人間関係でうまくいかなくて、どうしてこんなことになってしまったんだろうとずっと思ってました。RBプロジェクトとか部外者なんですけどね、私(苦笑)勝手に苦しかった。
渡辺：
馴れ合いは嫌だけど、私は雰囲気は良くやりたい派なんだよね。でも、昔の私は誰にでも100でぶつかって、それぞれの価値観があるから、もう流久里とはやっていられない！ と人が去って行った。
今は、クリエイターとして、ぶつからないといけない相手とタイミングは決めて、誰彼構わずぶつからないようにしている。でも、昔は全力でぶつかるのが誠意だと思っていたんだよね。
幸橋：
誠意だとは思います。でも、優先順位がみんな違うから、ちょっと間違えると独りよがりにはなるかもしれませんね。
渡辺：
RBプロジェクトもカルミアもそうだけど、一生懸命やると絶対ぶつかるんだよね。それは、質が高いものを作るためには必要なことで、クリエイターとして良いと思うけど、社会的に死ぬ。一方で、言い方は悪いけれど、手を抜いた方が社会的にはうまくやれる。でも、クリエイターとして死ぬ。どちらが良いのか今も考えるよ。
カルミアは理想が高すぎて、実力が伴わない現実に耐えられなかったというのもあるね。
幸橋：
流久里さんの中で、カルミアをまたやろうという気持ちはあるんですか？
渡辺：
そろそろやりませんかという話が出る事はあるし、途中になっているからやらないと、という義務感もある。でも、カルミアでやりたいことはスターダスト・インフェルノでやっているので、満足している部分もあって、やっても内容や設定は一新すると思う。義務感だけだとものにもならないし。それに昔と今では考え方も違う。
幸橋：
考え方？
渡辺：
一番顕著なのは、昔はお金はいらなかったけど、今はお金は絶対必要だと思っている。昔の私からすれば、今の私は嫌いな自分で、今の私からすれば、昔の私は甘いと思う。その違いにどう落としどころをつけるのか、調和をつけるのかは自分でもまだわからない。今は絶賛修行中でもあるし。この先、カルミアの片りんのある作品がたくさん生まれていくんじゃないかなと思う。
幸橋：
渡辺：
RBプロジェクトでも話し合えば良かったけど、若かったよね。あっちにはあっち、私には私の正義があった。モノクロはスターダスト・インフェルノに引き継がれているものがあるので、スタダスを見て下さい。
幸橋：
私個人の話になってしまうんですが、人間関係維持するのが苦手で、一旦切れてしまうと復活したことがないんです。だから、こうやってまた流久里さんと話しているのがすごく不思議で、夢みたいだなって。あの頃はもう二度と話す事はないと思ってました。
渡辺：
私も二度とないと思っていたよ。一度は切れた関係性がまたつながるという経験をして、時間はすごいと思った。いろいろありすぎだよってくらいあったけど、いろいろあったよねーなんてRBプロジェクトの泉と話したりするし(笑)
幸橋：
本当に時間ってすごいですよね。時間が解決するなんて少し前の私は信じてなかったですよ(笑)
渡辺：
大変だったけど、あれがないと今は無かったなと思う。
幸橋：
確かに。
では、今のところは、カルミアをやる予定はないんでしょうか？
渡辺：
うーん、カルミアではなく、新プロジェクトをやりますというのはあるかも。ただ、もう1回プロジェクトをやるなら作家引退戦になると思う。新プロジェクトが始まったら流久里引退始まるなと思ってもらえれば(笑)
『忘却学園プルガトリウムと最近の音声作品について』
幸橋：
最近の主な音声作品は「忘却学園プルガトリウム」とのことですが、どういったオーダーを頂いたんでしょうか？
渡辺：
キャストさんは決まっていて、そのキャストさんでイベントでもできるようなドラマにしたいという要望を貰って書きました。
幸橋：
イケメンキャラが多かったですし、やはり世に言う女性向け作品にしようと思って書いたんですか？ ドラマとしてもちゃんと聴きごたえのある作品だった気がしますが。
渡辺：
私も女性向けかなと思ってた。でも、かなり自由にやらせてもらって、ボイスドラマを聴いたことがない人でも、「ん？ なんか面白そう」と目を止めてもらえるような世界観にしたかった。 今までにやったことのない要素も出してみたかった、ちょっと妖しい雰囲気の世界や生徒会がそれだね。
幸橋：
出来上がったのを聴いてみてどうでした？
渡辺：
あ、こうなるんだ！ と。 音響演出に特に感動した。 収録は立ち会っていたんだけど、キャストさん達は、芝居に対して 真面目な方々だな！ という印象が強かったね。
幸橋：
どこかで書いたんですが、主人公を演じた小林さん*1が収録後のコメントで、流久里さんの事に言及していて、勝手に良い人だ！ と思ってます(笑)ちなみに続きは？
渡辺：
買ってくれたら出るかもね(笑)
幸橋：
皆さん買おう！(笑)商業でこういう風にきちんとしたオリジナルの音声作品作ってくれるところがゆーりんプロさん好きだなと思います。
渡辺：
お金にならないって言われるからね。ボイスドラマがメジャーになることはあるのかな？
幸橋：
私は何かしらパラダイムシフトが起こらない限り、廃れていくのかなとぼんやり思っています。起こしたいなという希望はありますが、廃れるなら延命頑張りつつ一緒に消えていこうかなって感じです。
渡辺：
ゼロにはならないと思うけれどね。熱い志の皆さん頑張ってください！(笑)
でも、同人は書きたいものがちゃんとあって、1点すごく光っているのが良いよねと仕事にすると思う。
幸橋：
私も粗削りでもその光っている部分が好きでここにいます(笑)正解が決まっていないのが良いなって。
渡辺：
世界とったるぜ！ というところが出て来ると良いよね。映画サークルとかだと嘘でも世界をとってやる！ というところがあるじゃない。そんな感じで。朗読でも「VOICARION（ヴォイサリオン）」*2とか完売しているのを見ると、何かできるんじゃないかなと思う。有名な人が出たら違うのかな？
幸橋：
ネームバリューがある人が出たら確かに違うと思います。有名な人を出す作品もない訳では無いですが、あんまり長続きしてるところを見かけないのが残念(苦笑)
渡辺：
やばい集団が1つでてきたら違うと思う、と10年前から話しているけれど難しいよね。でも、CDは絶対滅びないと思う。
『今後の予定と現在の最高傑作「スターダスト・インフェルノ」』
幸橋：
では、今後の予定に関して、存分に宣伝してください。スタダスとかスタダスとか←
渡辺：
あとは、10月10日～14日にも別の団体さんで、舞台と朗読合わせた作品で脚本担当します。まだ予約は開始していないけれど、これは新宿シアターブラッツで。
幸橋：
スターダスト・インフェルノ予約しました！ S席！
渡辺：
ありがとう！ 特典ブロマイドは誰？(笑)
幸橋：
え、秘密です(笑)とりあえず、行けるのが4ステージなので、4人ですね。
そう言えば、スタダスは、どういった経緯で制作することに？
渡辺：
代表が言い出したんだけど、スタダス制作のために集まったら、劇団作りますと言われて、え、聞いてないけど？ という始まりだったね(笑)
幸橋：
なんと(笑)こういう話にしようというのは決まってたんですか？
渡辺：
代表がこういう感じの話をやりたいなあというのは言っていたけど、好きに書いてくださいと言われたから好きに書いた。さっきも言ったけど、スタダスでは、モノクロで書けなかったテーマを意識しているから、モチーフが似ているね。今回、結構いろんなことがあばかれるよ。
幸橋：
例えば？
渡辺：
実は1人だけ全部の〇〇を〇〇〇いるとかね。
幸橋：
！！！？？？……え、誰ですか……あ、聞いてもネタバレになるか。えー(笑)
渡辺：
誰だと思う？(笑)
幸橋：
わからないですよ(苦笑)
渡辺：
そう言えば、気になるキャラはいるのー
幸橋：
単純に気になるのはプリンスですけどね。前回では謎な部分が多かったですし。ちょっとした動作にも含みがあって色々考えてしまいます。
渡辺：
新ちゃん*4かー、今回、出番多いよ(笑)
幸橋：
前作から続いて出て来るキャラは気になります。でも、新キャラもわからない分、気になる……うーん……関係ないですが、キャスト集合写真を見て、スタダスのキャストさんみんなきれいで、かっこよくて、顔審査でもあるんですか？
渡辺：
かもね(笑)
幸橋：
皆さんキラキラしていて、圧がすごいんですよね(苦笑)S席とってしまったけど、近くで観ていることに耐えられないんじゃないかって不安があります。顔きれいな人って遠ざけたくなりません？
渡辺：
あはは、でも、意外にみんな人見知りだよー
SNSとかルールがあるから反応出来ないこともあるけど、結構見ているから、リプとかしてあげてね。
幸橋：
今回の新作は一言で言うとどうですか。
渡辺：
いつも言っているんだけど、最高傑作は最新作。あ、これはチャップリンの言葉から取っているんだけどね、過去作品を毎回超えていくつもりで書いている。スタダスもそう。これまでの脚本を取り入れながら書いているね。
幸橋：
流久里さんの作品に似たテーマが入るのは、過去の脚本を取り入れているからなんですね。
渡辺：
そうだね。過去超えられなかった壁を越えようとしているから。好きなものを書いて下さいと言われたら過去との挑戦が始まる。
幸橋：
そんなスターダスト・インフェルノを楽しみにしています！
音声作品の仕事もぜひ流久里さんに！
渡辺：
仕事待ってます！(笑)
以上、渡辺流久里さんのインタビューでした！ ありがとうございます！
『後記』
まさか流久里さんのインタビューをする日が来ようとは、と実現することになった時はびっくりでした。内輪の思い出話になっていないか心配ですが(苦笑)今回載せられなかった話の中にもおもしろい内容があるので、機会があれば、別枠で何か書きたいですね（個人的には連載にしてしまいたいくらい←）
思い入れが強すぎて言葉に出来ないことがたくさんあります。9年かかってやっとたどり着いたこともあります。でも、今回は、1人のファンとして皆さんに流久里さんとその作品を知ってほしいなと思って書きました。インタビュアーの自己満足甚だしいですが、お付き合いありがとうございました。
***
インタビュアー／幸橋
ボイスドラマリスナー。
2009年よりボイスドラマ作品を聴き始め、2013年より開始した感想メモブログ「視聴note」にてボイドラ関連の記事が900件を突破（2018年1月時点）
【皆さんからの紹介をお待ちしています！！】
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*2:超豪華キャスト×生演奏による美しい音楽×上質な演出。 “必ずもう一度観たくなる”を謳う音楽朗読劇シリーズ http://www.tohostage.com/voicarion/
*3:第一部Record of farthestに続く第二部。宇宙旅行が可能になった時代。宇宙旅客機・アルカエフルクトゥスは、2222名を乗せて初の宇宙旅行に出発する。17歳の少年・レニーは、両親の反対を押しキり旅行に参加した。やがて、仕組まれたシナリオの秘密が明らかになる。”『愛は、殺すことができる』。YESorNO?" http://gekijoe.com/destroytheearth/
*4:新井裕士さん。ジールアビリティ所属俳優 https://twitter.com/arachan_dayo
